「会議室を使用する」「会議室を利用する」。
どちらも自然に見えるので、書くときにどちらを選べばいいのか迷います。
結論を先にお伝えすると、「使用」は物や人をそのまま使うこと、「利用」は役に立つように活かして使うことです。
ただ、この説明だけでは境目の場面で手が止まります。
そこで今回は、現行の法令で2つの言葉がどう使われているかを数えました。
すると、「使用済」は2,567件あるのに「利用済」は0件。
「有効利用」は113件あるのに「有効使用」は0件でした。
さらに土地収用法には、1つの文の中で「利用」と「使用」を使い分けている条文がありました。
この記事では、その数字と条文をそのまま示しながら整理します。
「利用」と「使用」の違いは?結論から
意味の重心が違います。
- 使用 … 物や人を、そのまま使うこと。道具として手に取る、場所を使う、人を雇う
- 利用 … 物や仕組みを、役に立つように活かして使うこと。サービスや制度、機能を役立てる
- ペンを使用する/使用上の注意/使用済みの電池
- サービスを利用する/土地を有効利用する/利用目的
「使用」は使う行為そのもの、「利用」は使って何かを得ることに目が向いている、と考えると分かりやすくなります。
法令では「使用」54,015件、「利用」33,893件
e-Gov法令検索で、現行の法令を横断検索しました(2026年9月13日確認)。
件数は、その語が出てくる条文の文の数です。
- 使用 … 54,015件
- 利用 … 33,893件
どちらも非常に多く、全体の件数を比べても違いは見えてきません。
違いがはっきり出るのは、ほかの言葉とくっついた形です。
くっつく言葉で、きれいに分かれる
- 使用済 … 2,567件/利用済 … 0件
- 有効利用 … 113件/有効使用 … 0件
- 土地利用 … 726件/土地使用 … 61件
- 使用される … 2,370件/利用される … 230件
- 利用目的 … 303件/使用目的 … 141件
いずれも e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
使い終わった物は「使用済」一択、役立て方を言うときは「有効利用」一択です。
「使用される」は「利用される」の約10倍ありました。
中身を見ると、「使用されるもの」「使用される自動車」のように物が使われる場面が大半です。
ただし2,366の文のうち約16%では、人が「使用される」、つまり雇われる意味で使われていました。この使い方は後で取り上げます。
土地収用法は1つの文で両方を使い分けていた
公共事業のために土地を取得する手続きを定めた法律が、土地収用法です。
その第2条に、2語の関係がいちばんよくわかる一文があります。
公共の利益となる事業の用に供するため土地を必要とする場合において、その土地を当該事業の用に供することが土地の利用上適正且つ合理的であるときは、この法律の定めるところにより、これを収用し、又は使用することができる。
出典:土地収用法 第2条(土地の収用又は使用)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
同じ文の中で、2つの言葉が別の役割を持っています。
- 土地の利用上適正且つ合理的 … その土地をどう役立てるのがよいかという観点
- 収用し、又は使用する … 事業のために、その土地を実際に使うこと
「利用」は土地の活かし方の話、「使用」は土地を使う行為そのもの。
「収用」(土地を取り上げること)と並べられているのも、「使用」が具体的な行為だからです。
1つの文の中で2語を書き分けている条文としては、医師法の「診療」と「診察」も同じ形でした。
くわしくは「診療」と「診察」の違いは?で扱っています。
人に対しては「使用」── 雇う・雇われる
「使用」には、人を雇うという意味もあります。
その代表が、働く人を守る労働基準法です。
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所…に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
出典:労働基準法 第9条(定義)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
出典:労働基準法 第10条/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
雇われる人は「使用される者」、雇う側は「使用者」。
「労働者」という言葉の定義そのものが、「使用される者」で書かれています。
商法にも、会社などで働く人を指す「使用人」という言葉があります。
支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
出典:商法 第21条第2項(支配人の代理権)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
「使用者」と「利用者」はまったく違う
法令には「使用者」が2,732件、「利用者」が7,780件出てきます。
「使用者」には、民法の「隣地使用者」「抵当建物使用者」のように土地や建物を使っている人を指す例もありますが、労働の法律では雇う側です。
いっぽう「利用者」は、サービスや施設を役立てる側を指します。
日常でも、人に対して「利用する」と言うと、その人を自分の得のために使うという、よくない響きになりがちです。
人について書くときは、とくに注意したいところです。
使い終わった物は「使用済」だけ
「使用済」2,567件の中心は、次のような言葉でした。
- 使用済燃料 … 1,402件(原子力の法律など)
- 使用済自動車 … 391件
- 使用済小型電子機器 … 109件
いずれも e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
自動車のリサイクルの法律は、「使用済自動車」をこう定義しています。
この法律において「使用済自動車」とは、自動車のうち、その使用(倉庫としての使用その他運行以外の用途への使用を含む。…)を終了したもの…をいう。
出典:使用済自動車の再資源化等に関する法律 第2条第2項(定義)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
「使用を終了した」物が「使用済」。使うという行為が終わったことを言うので、「利用済」とは書きません。
法令の中でも「利用済」は1件もありませんでした。
役立てるなら「利用」── 利用目的・有効利用
いっぽう「利用」は、何のために、どう役立てるかを言う場面で使われます。
身近な例が、個人情報保護法の「利用目的」です。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
出典:個人情報の保護に関する法律 第17条第1項(利用目的の特定)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
個人情報は、手に取って使う物ではなく、何かの目的に役立てるものです。だから「利用」です。
土地についても同じで、「土地利用」726件に対し「土地使用」は61件。
土地をどう活かすかを言うときは「利用」、その土地を実際に使うことを言うときは「使用」です。
「有効利用」が113件あって「有効使用」が0件なのも、「有効に」は役立て方を評価する言葉だからでしょう。
公の施設は「利用」、役所の財産は「使用」── 地方自治法
「会議室を使用する」「会議室を利用する」で迷ったときに、いちばん参考になるのが地方自治法です。
自治体が施設のお金を取るときの条文が、ここでも1つの文の中で2語を書き分けています。
普通地方公共団体は、第二百三十八条の四第七項の規定による許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる。
出典:地方自治法 第225条(使用料)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
「行政財産」は、市役所の庁舎のように役所が仕事のために持っている財産です。
それを本来の用途とは別に使わせてもらうには、許可が要ります。
行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
出典:地方自治法 第238条の4第7項(行政財産の管理及び処分)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
いっぽう「公の施設」は、公民館や体育館のように住民に使ってもらうための施設です。
普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2 …正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。出典:地方自治法 第244条(公の施設)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
- 行政財産の使用 … 役所の財産を、許可を受けて使わせてもらう
- 公の施設の利用 … 住民のために用意された施設を役立てる。正当な理由がなければ断られない
もともと住民のための施設なら「利用」、そうでない物や場所を使わせてもらうなら「使用」。
用意されたサービスを役立てるのか、物や場所そのものを使うのかという違いが、そのまま条文になっています。
「使用料」と「利用料」はほぼ同数
ちなみに、お金や権利の言葉では2語がほぼ同じ数だけ出てきます。
- 使用料 … 670件/利用料 … 603件
- 使用権 … 540件/利用権 … 549件
いずれも e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
地方自治法第225条のように、「公の施設の利用」に対しても名前は「使用料」という例があります。
料金の名前は、法律ごとの決まった言い方に従うのが安全です。
著作権法は「使用」と「利用」を別の意味で使う
2語の違いがもっとも厳密なのが、著作権法です。
この法律の中だけで数えても、「利用」が307回、「使用」が101回出てきます。
著作権の目的となつている著作物…は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、…その使用する者が複製することができる。
出典:著作権法 第30条(私的使用のための複製)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。
出典:著作権法 第63条(著作物の利用の許諾)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
個人や家庭の中で著作物を使うことは「使用」、著作権者が他人に認める著作物の使い方は「利用」。
著作権法では、この2語を取り違えると意味が変わってしまいます。
民法の「使用貸借」── ただで借りて使う
民法には、物をただで借りる契約として「使用貸借」があります(法令での件数は433件)。
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
出典:民法 第593条(使用貸借)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
借りた物をそのまま使う契約なので「使用」です。
ここでも、物を手元に置いて使う行為が「使用」と呼ばれています。
法令の数字で表記を確かめた話としては、「不要」と「不用」の違いは?もあわせてご覧ください。
迷ったときの考え方
道具・物・場所をそのまま使うなら「使用」
ペン、機械、薬、会議室。
決まった使い方で、そのまま使うときは「使用」です。「使用上の注意」「使用方法」などもこちらです。
サービス・制度・機能を役立てるなら「利用」
電車、図書館、クーポン、制度。
用意された仕組みを、自分の役に立てるときは「利用」です。
人について書くときは注意
雇う・雇われる関係は「使用」(使用者・使用される者)。
人を「利用する」と書くと、自分の得のために使うという響きになるので、意図しない限り避けたほうが安全です。
使い終わった物は「使用済」
使用済みの電池、使用済みの切手、使用済み燃料。
法令でも「使用済」2,567件、「利用済」0件でした。
どちらでもよい場面もある
「会議室を使用する」「会議室を利用する」は、どちらも誤りではありません。
部屋を使う行為に目を向けるなら「使用」、施設を役立てることに目を向けるなら「利用」です。
地方自治法の書き分けにならうなら、貸し出すために用意された会議室は「利用」、
本来は別の用途の部屋を許可を受けて使うなら「使用」と考えると筋が通ります。
同じ読みで意味が近い漢語の使い分けとしては、「調整」と「調節」の違いは?や「生育」と「成育」の違いは?もあわせてご覧ください。
法令を数えて言葉の使われ方を確かめた話としては、「親族」と「親戚」の違いは?もあわせてご覧ください。
1つの文の中で2つの言葉を書き分けている条文としては、「作成」「作製」「制作」「製作」の違いは?もあわせてご覧ください。
よくある質問
「使用者」と「利用者」の違いは何ですか
労働の法律では、「使用者」は雇う側です。労働基準法第10条が「事業主又は事業の経営担当者その他…」と定義しています。「利用者」はサービスや施設を役立てる側を指します。
「使用済み」と「利用済み」はどちらですか
「使用済み」です。現行の法令では「使用済」が2,567件あり、「利用済」は1件もありませんでした。
「利用目的」と「使用目的」はどちらですか
どちらもあります。法令では「利用目的」が303件、「使用目的」が141件でした。
個人情報のように役立て方を言うときは、個人情報保護法第17条のとおり「利用目的」です。
「私的使用」とは何ですか
著作権法第30条の言葉で、著作物を個人的に、または家庭内などの限られた範囲で使うことを指します。「私的利用」ではなく「私的使用」です。
公民館や体育館は「利用」ですか、「使用」ですか
「利用」が自然です。地方自治法第244条は、公民館や体育館のような「公の施設」を、住民の「利用に供するための施設」と定めています。
ただし料金の名前は、同じ法律の第225条で「使用料」です。
「有効使用」と書いてもいいですか
一般的ではありません。法令では「有効利用」が113件あり、「有効使用」は0件でした。役立て方を言うときは「利用」です。
まとめ
「使用」は物や人をそのまま使うこと、「利用」は役に立つように活かして使うことです。
法令の件数は「使用」54,015件、「利用」33,893件。
くっつく言葉で見ると、「使用済」2,567件/「利用済」0件、「有効利用」113件/「有効使用」0件と、はっきり分かれていました。
土地収用法第2条は、「土地の利用上適正且つ合理的であるときは…収用し、又は使用することができる」と、1つの文の中で2語を書き分けています。
人については、労働基準法が雇われる人を「使用される者」、雇う側を「使用者」と呼んでいます。
役立て方を言う場面では、個人情報保護法の「利用目的」、著作権法の「著作物の利用の許諾」のように「利用」が使われていました。
地方自治法も、「行政財産の使用又は公の施設の利用」と書き分けています。
迷ったら、そのまま使うなら「使用」、役立てるなら「利用」で書き分けてください。
法令を数えて表記を確かめた話としては、「科学」と「化学」の違いは?もあわせてご覧ください。

