「車両」と「車輌」「車輛」の違いは?法令では「車輛」は明治・大正だけ、「車輌」は会計の勘定科目だけだった

正しい読み方、つづり方

「車両」「車輌」「車輛」。
どれも「しゃりょう」と読むので、書類や案内文を書くときに、どの字を使えばいいのか迷います。

結論を先にお伝えすると、3つとも意味は同じで、違うのは字だけです。
ふつうに書くなら「車両」。「輌」と「輛」は、どちらも常用漢字表にない字です。

実際の法令を数えてみると、「車両」は5,383件あるのに対して、「車輛」は13件、「車輌」は3件しかありませんでした。
しかも「車輛」が残っているのは明治・大正の法令だけ、「車輌」は平成28年の社会福祉法人の会計の決まりだけです。

この記事では、常用漢字表と昭和31年の国の報告、法令の件数と条文をそのまま示しながら整理します。

「車両」と「車輌」の違いは?結論から

  • 車両 … 常用漢字で書いた、いまの一般的な書き方(法令・公的な文書はこちら)
  • 車輛 … 「両」の旧字体「兩」を含む「輛」で書いた、古い書き方(明治・大正の法令に残る)
  • 車輌 … 「車」に「両」を組み合わせた「輌」で書いた書き方(社会福祉法人の会計の決まりに残る)

意味はどれも同じで、車輪で動く乗り物のことです。
違いは字だけなので、迷ったら常用漢字の「車両」を選べば、法令と同じ書き方になります。

ここから、その根拠を順に見ていきます。

常用漢字表にあるのは「両」だけ:「輛」「輌」は入っていない

国が定めた常用漢字表で、「両」の字を確かめました。

  • 両(兩) … 音:リョウ。例:両親,両立,千両

出典:常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)本表/2026年9月14日確認

常用漢字表には「両」があり、括弧の中に「兩」が添えられています。常用漢字表の説明によれば、丸括弧の中はいわゆる康熙字典体で、明治以来の活字の字体とのつながりを示すために添えたものです(2026年9月14日確認)。
いっぽう「輛」と「輌」は、常用漢字表のどこにも入っていません

字の形を見比べると、関係がよく分かります。

  • … 「車」+「兩」(両の旧字体)
  • … 「車」+「両」
  • … 常用漢字。「車両」はこの字で書く

「輛」の右側を今の「両」の形にしたのが「輌」。そして「車両」は、「輛」そのものを同じ音の「両」に置きかえた書き方です。

法令は常用漢字表で書く決まり

法令の漢字の使い方は、内閣法制局が次のように定めています。

法令における漢字使用は,次の(2)から(6)までにおいて特別の定めをするもののほか,「常用漢字表」(平成22年内閣告示第2号。以下「常用漢字表」という。)の本表及び付表(表の見方及び使い方を含む。)…によるものとする。

出典:内閣法制局「法令における漢字使用等について」(平成22年11月30日)1(1)の一部/2026年9月14日確認

常用漢字表にない「輛」「輌」は、この決まりに沿うかぎり法令では使いません。今の法令が「車両」と書くのは、この決まりに合った書き方です。

常用漢字表にない字を扱った話としては、「蘇る」と「甦る」の違いは?「慣れる」と「馴れる」の違いは?もあわせてご覧ください。

昭和31年の「書きかえ」で「車輌」は「車両」に

「車両」という書き方の背景には、戦後の漢字の決まりがあります。
昭和21年の当用漢字表(今の常用漢字表の前身)に「輛」は入らず、昭和31年に国語審議会が、表にない字を同じ音の字に書きかえる例をまとめて報告しています。

矢印の左は当用漢字表にない漢字で書かれる漢語,右は書きかえである。

出典:国語審議会報告「同音の漢字による書きかえ」(昭和31年7月5日)/文化審議会国語分科会漢字小委員会(平成27年11月27日)資料3に収録されたもので確認/2026年9月14日確認

その一覧に、次の2つが載っています。

  • 車輌 → 車両
  • 輛 → 両

出典:国語審議会報告「同音の漢字による書きかえ」(昭和31年7月5日)/2026年9月14日確認

一覧の左側に載っているのは「車輌」の形で、そこに「当用漢字表にない漢字」の印が付いています。
「車両」は、当て字でも誤りでもなく、国の報告が示した書きかえです。

同じ一覧には、「侵蝕 → 侵食」「浸蝕 → 浸食」「日蝕 → 日食」「月蝕 → 月食」のように、「蝕」を「食」にする書きかえも並んでいます。

法令の数字:「車両」5,383件、「車輛」13件、「車輌」3件

では、実際の法令ではどうなっているのか。e-Gov法令検索で、現行の法令を横断検索しました(2026年9月14日確認)。

  • 車両 … 5,383件(731の法令)
  • 車輛 … 13件(3つの法令)
  • 車輌 … 3件(1つの法令)

件数は、その言葉を含む箇所の数です

「車両」は「車輛」の400倍以上。法令の中では、ほぼすべてが「車両」です。

「車両」が多いのは、道路と鉄道の法令

  1. 道路交通法 … 367件
  2. 道路運送車両法施行規則 … 236件
  3. 労働安全衛生規則 … 183件
  4. 鉄道に関する技術上の基準を定める省令 … 125件
  5. 道路運送車両の保安基準 … 122件

「車両」を含む箇所の数(附則などを含む)/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

いちばん多い道路交通法は、「車両」という言葉そのものを定義しています。

車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。

出典:道路交通法(昭和35年法律第105号)第2条第1項第8号/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

道路交通法の全文では「車両」が766回。「車輛」「車輌」は1回も出てきません

題名に「車両」が入る法令は23本、「車輛」「車輌」は0本

法令の名前(題名)に、それぞれの字が入っているものも数えました(2026年9月14日確認)。

  • 題名に「車両」を含む法令 … 23本
  • 題名に「車輛」を含む法令 … 0本
  • 題名に「車輌」を含む法令 … 0本

e-Gov法令検索の法令一覧から、題名に含む文字で数えたもの

いちばん古いのは、昭和26年6月1日に公布された道路運送車両法と、同じ日の道路運送車両法施行法です。昭和31年の書きかえの報告より5年早く、題名にはすでに「車両」が使われていました。

この法律で「道路運送車両」とは、自動車、原動機付自転車及び軽車両をいう。

出典:道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第2条第1項/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

いちばん新しいのは、令和2年の「特定車両停留施設の構造及び設備の基準を定める省令」でした。

法令の件数から言葉の書き分けを確かめた話としては、「習得」と「修得」の違いは?もあわせてご覧ください。

「車輛」が残るのは、明治・大正の法令だけ

「車輛」を含む13件は、次の3つの法令にしかありませんでした。

  • 伝染病患者鉄道乗車規程(明治33年逓信省令第38号) … 3件
  • 鉱業抵当法(明治38年法律第55号) … 1件
  • 軌道建設規程(大正12年内務省・鉄道省令) … 9件

e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

どれも、カタカナ交じりの古い文体のまま残っている法令です。

伝染病患者ヲ搭載セル車輛ハ其ノ入口ニ「伝染病者」ノ四字ヲ掲示スヘシ

出典:伝染病患者鉄道乗車規程(明治33年逓信省令第38号)第5条/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

機械、器具、車輛、船舶、牛馬其ノ他ノ附属物

出典:鉱業抵当法(明治38年法律第55号)第2条第1項第5号/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

同じ明治33年でも、鉄道営業法は「車両」

いっぽう、同じ明治33年にできた鉄道営業法は、今の条文では「車両」と書いています。

鉄道ノ建設、車両器具ノ構造及運転ハ国土交通省令ヲ以テ定ムル規程ニ依ルヘシ

出典:鉄道営業法(明治33年法律第65号)第1条/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

鉄道営業法の全文では「車両」が4回、「車輛」は0回です。
条文に「国土交通省令」とあるとおり、今の条文は、その後の改正を経たものです。古い法律かどうかより、書き直されたかどうかで字が分かれています。

1つの規程の中で「車輛」と「車両」が混ざっている

その分かれ方がいちばんよく見えるのが、大正12年の軌道建設規程です。
この規程の全文(附則を含む)には、「車輛」が10回、「車両」が12回、両方出てきます。

第10条は、1項が「車輛」、2項が「車両」、3項がまた「車輛」

本線路ニ於テハ並行セル両軌道中心間ノ間隔ハ車輛ノ最大幅員ニ四百粍ヲ加ヘタルモノヨリ小ナルコトヲ得ス

本線路ニ於テハ車両ト中央柱其ノ他ノ工作物トノ間隔ハ二百三十粍ヨリ小ナルコトヲ得ス

本線路ノ曲線ニ於テハ前二項ニ規定スル間隔ハ之ニ両車輛ノ偏倚スル寸法ヲ加ヘタルモノヨリ小ナルコトヲ得ス

出典:軌道建設規程(大正12年内務省・鉄道省令)第10条第1項〜第3項/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

同じ条の中で、1項は「車輛」、2項は「車両」、3項はまた「車輛」。
どれもカタカナ交じりの同じ文体ですが、字だけが項ごとに入れ替わっています

第22条は「車両」、隣の第23条は「車輛」

車両ニハ制動機ヲ装置スヘシ

出典:軌道建設規程(大正12年内務省・鉄道省令)第22条第1項/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

車輛ニハ救助器、担弾機、音響器及乗務員間ノ合図器ヲ装置スヘシ…

出典:軌道建設規程(大正12年内務省・鉄道省令)第23条第1項の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

「車両には制動機(ブレーキ)を付けること」と「車輛には救助器などを付けること」。
並んだ2つの条で、同じ乗り物を指す言葉の字が違います。

さらに、第21条ノ2、第21条ノ6、第32条の4、第32条の5のように、番号に「ノ2」「の4」が付いた条(あとから加えられた条)は、どれも「車両」でした。
もとの文章がそのまま残っている箇所は「車輛」、あとから加えたり改めたりした箇所は「車両」になっていると考えられます。

昭和31年8月20日の改正(運輸省・建設省令第1号)の附則も、「現に存する軌道の車両については」と「車両」で書いています。書きかえの報告が出た翌月の改正です。

1つの規則の中に両方の字が出てくる話としては、「侵食」と「浸食」の違いは?もあわせてご覧ください。上で見た書きかえの一覧の「侵蝕 → 侵食」「浸蝕 → 浸食」も、その記事で扱っています。

「車輌」は社会福祉法人の会計の決まりにだけ残っている

「車輌」の3件は、すべて平成28年の社会福祉法人会計基準にありました。
この省令の全文では、「車輌」が7回、「車両」は0回です。すべて、会計の勘定科目の名前です。

  • 別表第一(資金収支計算書勘定科目) … 車輌運搬具売却収入/車輌費支出/車輌運搬具取得支出
  • 別表第二(事業活動計算書勘定科目) … 車輌運搬具売却益/車輌費/車輌運搬具売却損・処分損
  • 別表第三(貸借対照表勘定科目) … 車輌運搬具

出典:社会福祉法人会計基準(平成28年厚生労働省令第79号)別表第一〜第三/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

平成28年という新しい省令でありながら、勘定科目の名前には「車輌」が使われています。

ほかの会計の法令は「車両運搬具」

同じ勘定科目の名前を、ほかの法令とも比べました(2026年9月14日確認)。

  • 車両運搬具 … 12件(ガス事業会計規則、農業協同組合法施行規則、地方公営企業法施行規則など9つの法令)
  • 車輌運搬具 … 3件(すべて社会福祉法人会計基準)
  • 車両及び運搬具 … 50件(租税特別措置法、法人税法施行令、所得税法施行令など)

e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認

ガス事業会計規則(昭和29年通商産業省令第15号)の別表第1のように、ほかの会計の法令は「車両運搬具」。税の法令では「車両及び運搬具」という書き方です。
「車輌運搬具」と書くのは、社会福祉法人会計基準だけでした。

迷ったときの使い分け

ふつうは「車両」

公的な文書、契約書、社内の規程、案内文など、ほとんどの場面は「車両」で書きます。
常用漢字で書ける書き方で、法令でも5,383件のほぼすべてが「車両」でした。

社会福祉法人の勘定科目は「車輌運搬具」

社会福祉法人の会計書類で、社会福祉法人会計基準の勘定科目名に合わせるなら「車輌運搬具」「車輌費」です。
それ以外の会計の法令は「車両運搬具」なので、どの決まりに合わせるかで字が変わります。

名前や引用は、元の字のまま

会社名・商品名・団体名などで「車輌」「車輛」が使われている場合は、その名前のとおりに書きます。
古い法令の条文を引用するときも、原文どおり「車輛」のまま写します。

場面ごとの例

  • 車両 … 車両の通行/車両の点検/鉄道車両/緊急車両/車両の保安基準/車両運搬具(多くの会計の法令)
  • 車輌 … 車輌運搬具・車輌費(社会福祉法人会計基準の勘定科目)/「車輌」を使った固有の名前
  • 車輛 … 明治・大正の法令の原文(伝染病患者鉄道乗車規程、鉱業抵当法、軌道建設規程)/「車輛」を使った固有の名前

迷ったら、「決められた名前や原文に合わせる必要があるか」を考えます。合わせる必要がなければ「車両」です。

よくある質問

「車両」「車輌」「車輛」は読み方が同じですか

はい、どれも「しゃりょう」です。

意味に違いはありますか

意味は同じで、違うのは字だけです。「車輛」は「両」の旧字体「兩」を含む「輛」、「車輌」は「車」に「両」を組み合わせた「輌」で書いたもので、どちらも常用漢字表にない字です。

「車輌」は間違いですか

間違いではありませんが、「輌」は常用漢字表にない字です。法令でも「車輌」は社会福祉法人会計基準の3件だけで、ほかは「車両」です。公的な文書やビジネス文書では「車両」と書くのが確実です。

いつから「車両」と書くようになったのですか

昭和21年の当用漢字表に「輛」が入らず、昭和31年の国語審議会報告「同音の漢字による書きかえ」に「車輌 → 車両」「輛 → 両」が示されました。法令の題名では、昭和26年の道路運送車両法がいちばん古い「車両」です。

法令で「車輛」はまだ使われていますか

現行の法令で13件あり、すべて明治・大正の法令(伝染病患者鉄道乗車規程、鉱業抵当法、軌道建設規程)です。軌道建設規程は、同じ条の中で「車輛」と「車両」が混ざっています。

鉄道の法令も「車両」ですか

はい。「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」では「車両」が125件、「鉄道車両」という言い回しは法令全体で203件あります。明治33年の鉄道営業法も、今の条文は「車両」です。

「車両運搬具」と「車輌運搬具」はどちらですか

多くの会計の法令は「車両運搬具」(9つの法令で12件)です。社会福祉法人会計基準だけが「車輌運搬具」と書いているので、社会福祉法人の会計書類ならその名前に合わせます。

まとめ

「車両」「車輌」「車輛」は意味が同じで、違うのは字だけです。
常用漢字表にあるのは「両」だけで、「輛」「輌」は入っていません。昭和31年の国語審議会報告にも「車輌 → 車両」の書きかえが示されています。

法令では「車両」が5,383件、「車輛」が13件、「車輌」が3件。「車輛」は明治・大正の法令だけ、「車輌」は社会福祉法人会計基準の勘定科目だけに残っていました。
大正12年の軌道建設規程では、同じ条の中で「車輛」と「車両」が入れ替わっています。

ふつうは「車両」、決められた名前や原文に合わせるときだけ「車輌」「車輛」と覚えておけば、法令と同じ書き方になります。

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