「ボウリング」と「ボーリング」はどっちが正しい?法律は「ボーリング場」と書いている

正しい読み方、つづり方

友達を誘うときに書くのは「ボウリング」か「ボーリング」か。
声に出すとどちらも同じに聞こえるので、文字にした瞬間に手が止まります。

結論を先にお伝えすると、ピンを倒す球技は「ボウリング」です。
穴を掘る工事のほうが「ボーリング」で、こちらは英語からして別の単語です。

ただ、この言葉にはほかの表記ゆれには無い、ややこしい事情があります。
国が「ボウリング」と例に挙げているのに、法律の条文は球技のほうを「ボーリング場」と書いているのです。

数えてみたところ、その差は20件対2件でした。
この記事では、根拠になっている資料と条文をそのまま示しながら、迷わない考え方を整理します。

「ボウリング」と「ボーリング」はどっちが正しい?結論から

ピンを倒す球技を指すなら「ボウリング」です。

もとになった英語が2つあり、意味がまったく違います。

  • ボウリング(bowling)… レーンにボールを転がしてピンを倒す球技。「ボウリング場」「ボウリング大会」
  • ボーリング(boring)… 地面に穴をあける作業。「地質ボーリング」「温泉のボーリング」

つづりが bowling と boring で、3文字目から違う別の単語です。
偶然カタカナにすると似た形になるだけで、語源のつながりはありません。

なお boring には「退屈な」という意味もありますが、これは bore(うんざりさせる)から来た別の使い方です。
「穴をあける」の bore と同じつづりなので、英語でも二つの顔を持つ単語ということになります。

内閣告示に「ボウリング〔球技〕」と書いてある

カタカナの書き方には、国が示した基準があります。
内閣告示第2号「外来語の表記」(平成3年6月28日)です。

この告示の留意事項その2(細則的な事項)Ⅲ の3に、長音の書き方が定められています。

3 長音は,原則として長音符号「ー」を用いて書く。

注2 「エー」「オー」と書かず,「エイ」「オウ」と書くような慣用のある場合は,それによる。
〔例〕 エイト ペイント レイアウト スペイン(地) ケインズ(人) サラダボウル ボウリング(球技)

出典:文化庁「外来語の表記」留意事項その2(細則的な事項)Ⅲ/2026年8月24日確認

原則は「ー」、「オウ」のほうが例外

ここは読み飛ばされやすいところですが、順番が大事です。

告示の原則は「長音は『ー』で書く」です。
「オウ」と書くのは、そう書く慣用がある場合に限って認められた注記の側にあたります。

つまり「ボウリング」は、原則ではなく例外として認められた表記です。
「国が『ボーリング』を禁止した」という書き方を見かけますが、告示にそのような記述はありません。

告示の前書きにも、性格がはっきり書かれています。

この『外来語の表記』は,法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書き表すための「外来語の表記」のよりどころを示すものである。

この『外来語の表記』は,科学,技術,芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。

出典:文化庁「外来語の表記」前書き/2026年8月24日確認

示されているのは「よりどころ」であって、禁止でも罰則でもありません。
この点は「ベッド」と「ベット」はどっちが正しい?で扱った語形のゆれと同じ構造です。

告示の中で、この2語だけが特別な扱いを受けている

告示には付録(用例集)が付いていて、日常語が五十音順に並んでいます。
その「ナ-ホ」の項を見ると、2語が数行の間隔で並んでいます。

  • ボウリング 〔球技〕
  • ホース
  • ボートレース
  • ポーランド(地)
  • ボーリング boring

片方には〔球技〕という意味の注記、もう片方にはboring という原つづりが添えられています。

注記が付いた語は、用例集全体で4語だけ

この用例集は数百語を収めていますが、〔 〕の注記が付いている語を数えると4語しかありません。

  • セーラー〔~服〕
  • ベニヤ〔~板〕
  • バレエ〔舞踊〕
  • ボウリング〔球技〕

前の2語は「セーラー服」「ベニヤ板」という複合語の形を示すためのものです。
意味を書き添えて別の語と区別しているのは、「バレエ〔舞踊〕」と「ボウリング〔球技〕」の2語だけということになります。

原つづりが添えられた語は3語だけ

同じように、ラテン文字のつづりが添えられている語を数えると3語です。

  • ツアー tour
  • ルクス lux
  • ボーリング boring

ここまでを合わせると、ひとつのことが見えてきます。

区別の相手にまで原つづりを添えて、両方を用例集に載せているのは「ボウリング/ボーリング」だけです。
バレエの相手にあたる「バレーボール」は、ただの見出し語として載っているだけで、つづりは付いていません。

告示を作った側が「この2語は必ず混ざる」と見込んでいたと読めます。
用例集の凡例には「ここに示した語形やその書き表し方は,一例であって,これ以外の書き方を否定するものではない」ともあり、あくまで手がかりとして置かれたものです。

それでも法律は「ボーリング場」と書いている

ここが、この言葉のいちばん面白いところです。

建築基準法(昭和25年法律第201号)の別表第二は、用途地域ごとに建てられる建物を並べた表です。
そこに球技のほうが登場しますが、表記はこうなっています。

(に) 第二種中高層住居専用地域内に建築してはならない建築物

三 ボーリング場、スケート場、水泳場その他これらに類する政令で定める運動施設

出典:建築基準法 別表第二(に)項第三号/e-Gov法令検索にて2026年8月24日確認

スケート場・水泳場と並んでいるので、掘削の話ではなく球技の施設だと分かります。
同じ表の(わ)項第七号にも、まったく同じ並びで出てきます。

数えると20件対2件だった

e-Gov法令検索で現行の法令を横断検索したところ、次のようになりました(2026年8月24日確認)。

  • ボーリング場」を含む法令 … 20件
  • ボウリング場」を含む法令 … 2件

「ボーリング場」側には、建築基準法と同施行令のほか、駐車場法施行令、都市再開発法施行令、活動火山対策特別措置法施行令、建築物の耐震改修の促進に関する法律施行令、バリアフリー法の施行令などが並びます。

いっぽう「ボウリング」という表記を含む法令は、全部で3件しかありませんでした。

  • 商標法施行規則 … 「ボウリング用具」「ボウリング靴」「ボウリング場の提供」
  • 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 … 「ボウリング場用設備」
  • 小売物価統計調査規則 … 「ボウリングゲーム代」

なぜ食い違うのか

時期を並べると、事情が見えてきます。

  • 昭和25年(1950年) … 建築基準法が制定。この時点で「ボーリング場」
  • 平成3年(1991年) … 内閣告示「外来語の表記」で「ボウリング〔球技〕」が例示される

告示より40年前の条文が、表記だけを理由に書き換えられることはありません。
法律の改正は必要な条文だけを対象に行われるので、古い表記はそのまま残ります。

告示と同時に出された内閣訓令第1号は、各行政機関に対して「これを…よりどころとするものとする」と述べていますが、過去の条文を遡って直せ、という意味ではないわけです。

結果として、同じ球技が、法令では「ボーリング場」、業界団体では「ボウリング」という状態が続いています。
ボウリング場の業界団体は公益社団法人 日本ボウリング場協会という名称です(2026年8月24日確認)。

掘削の「ボーリング」も正式な法令用語

穴をあけるほうの「ボーリング」は、俗な言い方ではありません。
法令の条文にそのまま使われている用語です。

  • 労働安全衛生規則 … 第二編第二章第二節の見出しが「くい打機、くい抜機及びボーリングマシン
  • 地下水調査作業規程準則 … 「地質ボーリング」「地質ボーリング台帳」という語を用いる

地質調査、井戸や温泉の掘削、杭を打つ前の調査。
これらの現場では「ボーリング」が正式な呼び方で、「ボウリング」と書くほうが誤りになります。

建設や不動産の書類で「ボーリング調査」と書かれていたら、それは球技の話ではありません。

なぜ耳では区別できないのか

この2語が混ざるのは、日本語の側に理由があります。

bowling の「ボウ」は、英語では「オ」から「ウ」へ動く二重母音です。
boring の「ボー」は、動かずに伸びる長母音です。

英語では別の音ですが、日本語に入ると、どちらも「オー」と伸ばす音に落ち着きます。
だから耳では区別できず、文字にするときだけ迷うことになります。

告示が「長音は原則として『ー』を用いて書く」と定め、「オウ」をわざわざ注記に回しているのは、まさにこの現象を前提にしているからです。
放っておけば「ー」になるので、そうならない語を例外として並べておく必要があったわけです。

同じ理由で起きる表記ゆれには、「グラウンド」と「グランド」はどっちが正しい?があります。
こちらは ground の「アウ」が縮んで「アン」に聞こえてしまう例で、原因の作りはよく似ています。

「オウ」「エイ」と書く仲間は告示に7語

ボウリングと同じ注記に並んでいる語は、全部で7語です。

  • エイト(eight)
  • ペイント(paint)
  • レイアウト(layout)
  • スペイン(地名)
  • ケインズ(人名)
  • サラダボウル(salad bowl)
  • ボウリング(球技)

「エート」「ペーント」「レーアウト」と書かないのと同じ理由で、「ボーリング」ではなく「ボウリング」になります。

並べてみると、どれも言われてみれば「ー」で書いたことがない語ばかりです。
ボウリングだけが揺れているのは、同じ音の別語(boring)が身近にあるからだと分かります。

ちなみに「サラダボウル」の bowl と、ボウリングの bowl はつづりが同じです。
ただし投げる球のほうは英語でも ball なので、「ボウリングのボール」で正しいことになります。

迷ったときの考え方

ピンを倒すなら「ボウリング」

レジャーの話、スコアの話、レーンの話であれば「ボウリング」です。
「ボウリング場」「ボウリング大会」「ボウリングのスコア」。すべて「ウ」が入ります。

穴をあけるなら「ボーリング」

地質調査、温泉、井戸、杭の下調べであれば「ボーリング」です。
「ボーリング調査」「ボーリング柱状図」「地質ボーリング」。こちらは伸ばす音になります。

行政文書の「ボーリング場」は誤植ではない

役所の資料や条例で「ボーリング場」と書かれていても、書き間違いではありません。
建築基準法の条文がその表記なので、それを引用しているだけです。

自分で文章を書くときは「ボウリング」を選び、引用するときは元の表記のままにする。
これが、いちばん行き違いの少ない扱い方です。

よくある質問

「ボーリング大会」と書いたら間違いですか

球技の意味なら「ボウリング大会」が推奨される表記です。
ただし内閣告示は「ボーリング」を誤りとは書いておらず、示しているのは「よりどころ」です。
社内の慣例で「ボーリング大会」が定着しているなら、無理に直す必要はありません。

どうして英語では別の単語なのに、日本語だと混ざるのですか

bowling の「オウ」は二重母音、boring の「オー」は長母音で、英語では別の音です。
日本語に取り込まれるときにどちらも「オー」と伸ばす音になるため、耳では区別できなくなります。

「ボウリング」の「ボウ」は、サラダボウルのボウルと同じですか

英語のつづりはどちらも bowl です。
内閣告示の用例集でも、サラダボウルとボウリングは同じ注記の例として並べられています。

ボウリングで投げる球は「ボウル」ですか「ボール」ですか

「ボール」です。英語でも bowling ball と呼びます。
競技名の bowl と、球を指す ball は別の単語です。

温泉を掘るのは「ボーリング」で合っていますか

合っています。地面に穴をあける作業は「ボーリング」です。
労働安全衛生規則にも「ボーリングマシン」という語があり、法令上の用語として使われています。

どちらか一方に統一された日はありますか

ありません。平成3年の内閣告示で「ボウリング〔球技〕」が例示されましたが、告示は表記を強制するものではありません。
現に現行の法令には、球技を指す「ボーリング場」という表記が20件残っています。

まとめ

ピンを倒す球技は「ボウリング」、地面に穴をあけるのは「ボーリング」です。
英語のつづりが bowling と boring で、そもそも別の単語です。

内閣告示「外来語の表記」の用例集には、「ボウリング〔球技〕」と「ボーリング boring」が数行の間隔で並んでいます。
意味の注記が付いた語は全部で4語、原つづりが添えられた語は3語しかなく、両方をそろえて載せているのはこの2語だけです。

ただし、告示が示しているのは「よりどころ」であって禁止ではありません。
実際、球技を「ボーリング場」と書く現行法令が20件、「ボウリング場」と書く法令は2件です。
建築基準法の別表第二が昭和25年の表記のまま残っているためで、書き間違いではありません。

耳で区別できないのは、bowling の二重母音が日本語では「オー」に落ち着いてしまうからです。
放っておけば「ー」になるので、告示はわざわざ「オウ」を注記に並べる必要がありました。

迷ったら「投げるのか、掘るのか」で分けてください。それで足ります。

同じ二重母音が縮んで起きる表記ゆれは「グラウンド」と「グランド」はどっちが正しい?を、
内閣告示が語形のゆれをどう扱っているかは「ベッド」と「ベット」はどっちが正しい?を、
専門分野の団体が表記を決めた例は「ウイルス」と「ウィルス」はどっちが正しい?もあわせてご覧ください。

※本記事の外来語表記の基準に関する記述は文化庁「外来語の表記」(平成3年内閣告示第2号)前書き・留意事項その2・付録用例集を、法令の条文および件数はe-Gov法令検索を、いずれも2026年8月24日に確認したものです。法令の件数は同日時点でのキーワード検索の結果です。

同じ内閣告示が両方の書き方を並べている例としては、「ウエディング」と「ウェディング」はどっちが正しい?「スウェーデン」が例外になる理由もあわせてご覧ください。

同じく告示の原則と例外が入れ替わって見える語としては、「タイヤ」と「タイア」はどっちが正しい?告示の原則は「タイア」のほうもあわせてご覧ください。

英語では別の単語なのにカタカナで似てしまう例としては、「バッジ」と「バッチ」はどっちが正しい?「バッヂ」が古い表記になった理由もあわせてご覧ください。

法令の表記が分野によって割れている例としては、「ダイヤ」と「ダイア」はどっちが正しい?法令の中でも割れている語があるもあわせてご覧ください。

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