「資料を作成する」「模型を作製する」「番組を制作する」「機械を製作する」。
どれも「つくる」ですが、書くときにどの漢字を選べばいいのか迷います。
結論を先にお伝えすると、書類やデータは「作成」、形のある物は「作製」、番組や作品は「制作」、機械や製品は「製作」が基本です。
このうち「作成」と「作製」には、法令の書き方の決まりまであります。
ところが、実際の法令を数えてみると、話はそれほど単純ではありませんでした。
財政法は、予算の書類を「作製」と書いていました。しかも、2021年にできたデジタル庁設置法にも「書類の作製」が出てきます。
この記事では、決まりと条文をそのまま示しながら、4つの言葉の違いを整理します。
「作成」「作製」「制作」「製作」の違いは?結論から
- 作成(さくせい)… 書類・計画・データなど、形のないものをまとめる(例:資料を作成する、計画を作成する)
- 作製(さくせい)… 形のある物をつくる(例:模型を作製する、試料を作製する)
- 制作(せいさく)… 番組・映画・作品などをつくる(例:番組を制作する)
- 製作(せいさく)… 機械・道具・製品などをつくる(例:部品を製作する)
読みで分けると、「さくせい」が2つ、「せいさく」が2つです。
同じ読みの2語どうしで、何をつくるかによって字が変わります。
このうち、国の決まりで書き分けがはっきり示されているのは「作成」と「作製」です。まずはそこから見ていきます。
法令の決まり:「作製」は物品を作るときだけ
法令の漢字の書き方は、内閣法制局が決めています。その中に、次の一文があります。
作製・作成(「作製」は製作(物品を作ること)という意味についてのみ用いる。それ以外の場合は「作成」を用いる。)
出典:内閣法制局「法令における漢字使用等について」(平成22年11月30日)1(6)/2026年9月14日確認
つまり法令の書き方では、物品を作るときだけ「作製」、それ以外はすべて「作成」です。
書類、計画、名簿、データのように形のないものは「作成」になります。
この一文は、「次のものは,( )の中に示すように取り扱うものとする」とした一覧の中にあります。
同じ一覧には「停年(用いない。「定年」を用いる。)」のように、法令で使う言葉の決まりが並んでいます。
ところが財政法は、書類を「作製」していた
では、実際の法令はこの決まりどおりなのか。
e-Gov法令検索で、現行の法令から「作製」を横断検索しました(2026年9月14日確認)。
「作製」は177件。多かったのは次の法令です。
- 予算決算及び会計令 … 37件
- 財政法 … 17件
- 国税収納金整理資金事務取扱規則 … 16件
- 国税収納金整理資金に関する法律施行令 … 9件
- 支出負担行為等取扱規則 … 8件
件数は「作製」を含む箇所の数/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認
上位は、国のお金の出し入れを定めた法令ばかりでした。
財政法の条文を見ると、「作製」しているのは物ではありません。
第十七条 衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長は、毎会計年度、その所掌に係る歳入、歳出、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類を作製し、これを内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付しなければならない。
出典:財政法(昭和22年法律第34号)第17条第1項/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認
作製しているのは、予算の「見積に関する書類」です。
財政法の中で「作製」されているものを並べると、次のとおりです。
- 見積に関する書類(第17条)
- 概算(第18条)
- 歳入予算明細書、予定経費要求書等(第20条)
- 支払の計画に関する書類(第34条)
- 予備費使用書、調書(第35条・第36条)
- 決算報告書、計算書(第37条)
どれも書類です。今の法令の決まりに当てはめれば「作成」になるものを、財政法は「作製」と書いています。
同じ条文の中に「作成」と「作製」が並んでいる
さらに面白いのが第38条です。
第三十八条 財務大臣は、歳入決算明細書及び歳出の決算報告書に基いて、歳入歳出の決算を作成しなければならない。
2 歳入歳出の決算は、歳入歳出予算と同一の区分により、これを作製し、且つ、これに左の事項を明らかにしなければならない。出典:財政法 第38条(第2項は一部省略)/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認
第1項では決算を「作成」、第2項では同じ決算を「作製」。
1つの条文の中で、同じものに2つの書き方が使われています。
財政法の本則全体では、「作製」17回、「作成」12回でした。
予算そのものをつくるところ(第21条の予算、第29条の補正予算、第30条の暫定予算)は「作成」です。
会計法も同じで、第29条の8では契約書を「作成」、第47条では報告書及び計算書を「作製」と書いています。
決まりができた後の法律にも「書類の作製」がある
財政法は昭和22年(1947年)の法律で、内閣法制局の決まり(平成22年)よりずっと前にできています。
ところが、決まりができた後の法律にも「作製」が出てきます。
- 復興庁設置法(平成23年法律第125号)第4条第2項第3号 … 「支出負担行為の実施計画に関する書類の作製を含め執行させること」
- デジタル庁設置法(令和3年法律第36号)第4条第2項第18号 … 「支出負担行為の実施計画に関する書類の作製を含め執行させること」
いずれも e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認
どちらも、財政法第34条の2にある「支出負担行為…の実施計画に関する書類を作製して」と同じ書類です。
2021年の新しい法律でも、この書類については「作製」の字が使われています。
名簿や計画を「作製」する法律もある
会計の法令以外にも、形のないものを「作製」している条文があります。
- 労働関係調整法 第10条 … 斡旋員候補者の名簿を作製
- 教育職員免許法 第8条第2項 … 免許状の原簿を作製
- 測量法 第48条第2項 … 測量に関する計画を作製
- 図書館法 第8条 … 総合目録の作製
- 社会教育法 第3条 … 資料の作製
いずれも e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認
いずれも、昭和21年から25年にできた法律です。
物を「作製」する条文は決まりどおり
もちろん、形のある物を「作製」している条文もあります。
- 消防法 第8条の3第5項 … 「生地その他の材料からカーテンその他の防炎対象物品を作製させたとき」
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令 第1条第1号 … 「人若しくは動物の細胞から作製された血球成分」
カーテンや血球成分のように、形のある物をつくるときの「作製」は、決まりどおりの使い方です。
法令を数えて言葉を確かめた話としては、「親族」と「親戚」の違いは?もあわせてご覧ください。
4つの言葉を法令で数えた
4つの言葉を、現行の法令で横断検索しました(2026年9月14日確認)。
- 作成 … 30,830件
- 製作 … 1,973件
- 作製 … 177件
- 制作 … 147件
件数は、その言葉を含む箇所の数です
「作成」が桁違いに多く、「作製」と「制作」はどちらも200件に届きません。
「製作」は税・自動車・映画の法令に多い
「製作」1,973件は、特定の法令に集まっていました。
- 租税特別措置法 … 715件
- 著作権法 … 50件
- 道路運送車両法 … 46件
租税特別措置法では、機械や設備を手に入れる方法として、「取得」と「製作」が並べて使われています。
…特定機械装置等でその製作の後事業の用に供されたことのないものを取得し、又は特定機械装置等を製作して、…
出典:租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第10条の3第1項(中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除)の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認
買ってくるなら「取得」、自分でつくるなら「製作」。本則(附則を除いた本体)だけで「製作」は138回、「取得し、又は製作」という言い回しは15回ありました。
道路運送車両法は、「自動車」の定義そのものに「製作」を使っています。
2 この法律で「自動車」とは、原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの…
出典:道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第2条第2項の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認
機械や車のような実用の物をつくるのが「製作」だということが、条文の使われ方からも分かります。
「制作」は番組やコンテンツの法令に出てくる
「制作」147件は、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律(19件)や放送法(4件)など、映像・番組・コンテンツに関わる法令に出てきます。
「制作」と「作成」を1つの文で書き分けた条文
放送法施行令には、「制作」と「作成」を1つの号の中で使い分けている条文があります。
一 協会の委託により、放送番組を制作し、放送番組の制作に必要な装置を作成し、又は放送に必要な施設を建設し、若しくは管理する事業
出典:放送法施行令(昭和25年政令第163号)第2条第1項第1号/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認
番組は「制作」、装置は「作成」。つくるものによって字を変えています。
ただ、装置は形のある物です。
内閣法制局の決まりに当てはめると「作製」の側に入りそうですが、この条文では「作成」と書かれています。
1つの文の中で2つの言葉を書き分けている条文としては、「診療」と「診察」の違いは?や「利用」と「使用」の違いは?もあわせてご覧ください。
著作権法:映画の「製作者」と「制作」
「製作」と「制作」の違いが条文に表れているのが、著作権法です。
十 映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。
出典:著作権法(昭和45年法律第48号)第2条第1項第10号/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認
映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。
出典:著作権法 第16条(一部省略)/e-Gov法令検索にて2026年9月14日確認
同じ映画でも、発意と責任を持つ側は「製作」、作品づくりを担当する仕事の一つとして「制作」が挙がっています。
著作権法の本則では、「製作」43回に対して「制作」は1回だけ。その1回が、この第16条です。
「作成」は82回、「作製」は0回でした。
迷ったときの使い分け
書類・資料・計画・データは「作成」
内閣法制局の決まりでは、物品以外はすべて「作成」です。
法令の中でも、書類を「作製」と書く例は財政法など一部です(「作成」30,830件に対し、「作製」は177件)。
いまの文章で書類をつくるなら「作成」を選べば間違いありません。
模型・部品・試料など、形のある物は「作製」
「物品を作ること」が「作製」です。
消防法の「防炎対象物品を作製」、再生医療の法令の「細胞から作製された血球成分」のように、手に取れる物をつくるときに使います。
番組・映画・作品は「制作」、機械・製品は「製作」
放送法の「放送番組を制作」のように、表現としての作品をつくるなら「制作」。
機械や車、製品のように実用の物をつくるなら「製作」です。
映画の場合は、著作権法のように、発意と責任を持つ会社の側を「製作」、作品づくりの担当を「制作」と分けて書く例があります。
同じ読みで漢字が分かれる言葉としては、「調整」と「調節」の違いは?もあわせてご覧ください。
同じ法令の書き方の決まりの一覧から確かめた話としては、「侵食」と「浸食」の違いは?もあわせてご覧ください。
法令の名前の付け方の決まりを確かめた話としては、「規定」と「規程」の違いは?もあわせてご覧ください。
同じ決まりの一覧の「書き分け」を確かめた話としては、「改訂」と「改定」の違いは?もあわせてご覧ください。
法令の件数から言葉の書き分けを確かめた話としては、「習得」と「修得」の違いは?もあわせてご覧ください。法令では「単位」と組み合わさるのは「修得」だけで、「習得」とは0件でした。
よくある質問
「作成」と「作製」は読み方が同じですか
はい、どちらも「さくせい」です。「制作」と「製作」も、どちらも「せいさく」と読みます。
「資料の作製」は間違いですか
内閣法制局の決まりでは、物品以外は「作成」を使うので、「資料の作成」が今の法令の書き方です。ただし社会教育法や図書館法には「資料の作製」が残っています。一般の文章なら「資料の作成」を選べば迷いません。
財政法の「作製」は誤りですか
誤りとまでは言えません。内閣法制局の決まりは平成22年のもので、財政法は昭和22年の法律です。現行の財政法には、今も「作製」17回と「作成」12回が並んでいます。
「製作」と「制作」は、映画ではどちらですか
著作権法は、映画の著作物の製作に発意と責任を有する者を「映画製作者」と呼び、作品づくりを担当する仕事の一つとして「制作」を挙げています。どちらの立場の話かで字が変わります。
まとめ
書類やデータは「作成」、形のある物は「作製」、番組や作品は「制作」、機械や製品は「製作」が基本です。
「作成」と「作製」には、内閣法制局の決まりがあります。「作製」は物品を作ることにだけ使い、それ以外は「作成」です。
ただ、実際の法令では、財政法が予算の書類を「作製」と書き、第38条では同じ決算に「作成」と「作製」の両方を使っていました。
2021年のデジタル庁設置法にも「書類の作製」が出てきます。
法令の数は、作成30,830件、製作1,973件、作製177件、制作147件。
迷ったら、書類なら「作成」、物なら「作製」と覚えておけば、今の決まりどおりに書けます。

