「大学のこうぎに出る」と書くとき、「講義」と「講議」のどちらだったか、迷うことがあります。
結論を先にお伝えすると、正しいのは「講義」です。「講議」という書き方は、国の資料にも法令にも出てきません。
現行の法令を調べると、「講義」は306件(90の法令)ありましたが、「講議」は0件でした。常用漢字表でも、「講」の音読みの例に「講義」そのものが挙がっています。
さらに、よく一緒に迷う「講義」と「授業」の関係も、条文にはっきり書かれていました。大学設置基準は「授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより…行う」と定めています。授業が大きな言葉で、講義はその方法の1つです。
この記事では、常用漢字表と法令の件数・条文をそのまま示しながら整理します。
「講義」と「講議」の違いは?結論から
- 講義(こうぎ)… 正しい書き方。学問の内容を説き聞かせること、大学などの授業の方法の1つ
- 講議 … 誤り。常用漢字表の例にも、現行の法令にも出てこない
迷いやすいのは、「こうぎ」と読む言葉に「抗議」があり、「議」の字が頭に浮かびやすいためです。ただ、「議」を使う「こうぎ」は「抗議」であって、「講議」という言葉はありません。
読み方につられて字を間違えやすい言葉としては、「ずつ」と「づつ」はどっちが正しい?もあわせてご覧ください。
ここから、その根拠を順に見ていきます。
常用漢字表で見る:「講」の例に「講義」
国が定めた常用漢字表で、3つの字の読みと例を確かめました。
- 講 … 音:コウ。例:講義,講演,聴講
- 義 … 音:ギ。例:義理,意義,正義
- 議 … 音:ギ。例:議論,会議,異議
出典:常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)本表/2026年9月20日確認
「講」の例に並ぶ3語のうち、いちばん最初が「講義」です。
いっぽう「議」の例は「議論」「会議」「異議」。話し合いに関わる言葉が並んでいます。「義」の例は「義理」「意義」「正義」で、意味や筋道に関わる言葉です。
「こうぎ」は話し合うことではなく、内容を説き聞かせることなので、「義」を使った「講義」になります。
法令の数字:「講義」306件、「講議」0件
では、実際の法令ではどうか。e-Gov法令検索で、現行の法令を横断検索しました(2026年9月20日確認)。
- 講義 … 306件(90の法令)
- 講議 … 0件
件数は、その言葉を含む箇所の数です
「講議」は1件も見つかりませんでした。法令は表記を厳しく統一する文書なので、ここに出てこない書き方は、公的な文書では使われていないと考えてよいものです。
「講」の付く言葉の件数
- 講習 … 6,889件
- 講師 … 762件
- 講義 … 306件
- 講座 … 106件
- 講演 … 45件
- 聴講 … 9件
e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
法令でいちばん多いのは「講習」です。資格を取るときや、免許を更新するときの講習が、数多く定められているためです。
題名に入るのは「講習」で、「講義」は0本
- 題名に「講習」を含む法令 … 19本(社会教育主事講習等規程、学校図書館司書教諭講習規程など)
- 題名に「授業」を含む法令 … 2本(国立大学等の授業料その他の費用に関する省令など)
- 題名に「講義」を含む法令 … 0本
e-Gov法令検索の法令一覧から、題名に含む文字で数えたもの(2026年9月20日確認)
法令の件数から言葉の使い分けを確かめた話としては、「状況」と「状態」の違いは?もあわせてご覧ください。
法令の「講義」は、講習のやり方を指す言葉
法令に出てくる「講義」は、大学の授業よりも、資格の講習をどうやって行うかを定める場面で使われています。
講習は、講義により行われるものであること。
出典:船員法施行規則(昭和22年運輸省令第23号)第77条の6の20(登録学科講習事務の実施に係る義務)第1号/e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
「講義により行われる」。講習という枠があり、その中身のやり方が「講義」です。法令の文書の名前の書き分けについては、「規定」と「規程」の違いは?もあわせてご覧ください。
「講義及び演習により行う」という形もよく使われ、現行の法令に17件ありました。
法第三十五条の二第一項の規定により都道府県知事が行う研修は、次に掲げる事項についての講義及び演習により行うものとする。
出典:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則(昭和25年厚生省令第31号)第18条の2/e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
「講義」が多い法令
- 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律施行規則 … 11件
- 介護保険法施行規則 … 11件
- 建築士法に基づく中央指定登録機関等に関する省令 … 10件
- 宅地建物取引業法施行規則 … 9件
- 船舶職員及び小型船舶操縦者法 … 8件
「講義」を含む箇所の数(横断検索の結果を全件取得して法令別に集計)/2026年9月20日確認
公害防止管理者、介護支援専門員、建築士、宅地建物取引士、船舶職員。どれも資格や免許の講習です。306件のうち284件が省令などの命令に出てきます。
「講義時間」「講義の内容」という言い回し
306件を見ていくと、講習の中身を細かく決めるための言い回しが並んでいます。
- 講師 … 44件
- 講義室 … 33件
- 講義の内容 … 32件
- 講義により行う … 21件
- 講義、演習… … 19件/講義及び演習 … 17件
- 講義時間 … 11件
「講義」を含む306件の中で、その言い回しを含む箇所の数/2026年9月20日確認
宅地建物取引業法施行規則は、登録講習の時間までこう決めています。
登録講習は講義により行い、講義時間の合計はおおむね五十時間とし、登録講習科目ごとの講義時間は国土交通大臣が定める時間とする
出典:宅地建物取引業法施行規則(昭和32年建設省令第12号)の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
介護保険法施行規則は、講義を通信の方法で行えることまで書いています。
講義は、通信の方法によって行うことができるものとする。この場合においては、添削指導、面接指導等適切な措置を併せて講じなければならない。
出典:介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
公害防止管理者の講習を定めた規則も、「講習は、講義及び修了試験により行う。」と書き、講義の科目と時間を別表で決めています。
どの規則でも、「講義」は講習を組み立てる部品の名前として使われています。
「講義」と「授業」はどう違う?大学設置基準の条文
もう1つよく迷うのが、「講義」と「授業」の関係です。これは大学設置基準に、はっきり書かれています。
授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。
出典:大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)第25条第1項(授業の方法)/e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
「授業」が大きな言葉で、「講義」はその方法の1つです。同じ授業でも、実験や実習は「講義」とは呼びません。
教室の決まりも、同じ並びで書かれています。
教室は、学科又は課程に応じ、講義、演習、実験、実習又は実技を行うのに必要な種類と数を備えるものとする。
出典:大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)第36条第2項(校舎)/e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
学校教育法に「講義」は1回も出てこない
- 学校教育法 … 授業 13回/講義 0回
- 大学設置基準 … 授業 139回/講義 2回
- 専修学校設置基準 … 授業 138回/講義 4回
各法令の全文(附則を含む)で数えたもの/e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
小学校から大学までを定める学校教育法は、「授業」だけを使い、「講義」は使っていません。
「講義」が出てくるのは、授業のやり方を細かく決める省令のほうです。
時間の数え方も「講義」と「演習」で違う
一 講義及び演習については、十五時間から三十時間までの範囲で専修学校が定める時間の授業をもつて一単位とする。
二 実験、実習及び実技については、三十時間から四十五時間までの範囲で専修学校が定める時間の授業をもつて一単位とする。…出典:専修学校設置基準(昭和51年文部省令第2号)第28条の4第2項第1号・第2号(各授業科目の単位数)/e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
危険物取扱者の受験資格を定めた規則は、もっとはっきりしています。
…化学に関する授業科目を、講義については十五時間、演習については三十時間、実験、実習及び実技については四十五時間の授業をもつてそれぞれ一単位として十五単位以上修得した者
出典:危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第53条の3(受験資格)第3号の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
同じ1単位でも、講義なら15時間、演習なら30時間、実験・実習・実技なら45時間。「講義」は、話を聞いて学ぶ方法として、ほかの方法と区別されています。
学ぶことに関わる言葉の書き分けは、「習得」と「修得」の違いは?でも取り上げています。
「講義」「講習」「講演」の使い分け
「講」の付く言葉は、法令の中でも役割が分かれています。
- 講習(6,889件)… 資格や免許のために受けるまとまった学習の枠。題名に入る法令が19本ある
- 講義(306件)… その講習や授業を行う方法(講義により行う、講義及び演習による)
- 講演(45件)… 人を集めて話す催し(講演会)
e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
社会教育法は、市町村の教育委員会の事務として、次のように並べています。
講座の開設及び討論会、講習会、講演会、展示会その他の集会の開催並びにこれらの奨励に関すること。
出典:社会教育法(昭和24年法律第207号)第5条第1項第6号/e-Gov法令検索にて2026年9月20日確認
討論会、講習会、講演会、展示会。ここでは集会の種類として「講演会」が挙がっています。「講義会」とは言いません。
迷ったときの使い分け
「こうぎ」は「講義」と書く
学問の内容を説き聞かせることは「講義」です。「講議」は常用漢字表の例にも、現行の法令306件の中にもありません。
抗議したいときだけ「抗議」
反対の意思を伝える「こうぎ」は「抗議」で、字が違います。「議」を使うのはこちらです。
授業の方法を言うなら「講義」
大学の時間割そのものを指すなら「授業」、その中で話を聞いて学ぶ形を指すなら「講義」です。実験や実習と並べるときは「講義」を使います。
場面ごとの例
- 講義 … 大学の講義に出る/講義により行う講習(船員法施行規則)/講義室(法令に38件)/講義及び演習
- 講習 … 免許更新の講習/講習会
- 講演 … 講演会を開く
- 抗議 … 判定に抗議する
迷ったら、「話し合いではなく、内容を説き聞かせる話か」を考えます。説き聞かせる話なら「講義」です。
よくある質問
「講議」は間違いですか
公的な文書の書き方としては誤りです。常用漢字表の「議」の例は「議論」「会議」「異議」で、「講議」は挙がっていません。現行の法令にも0件でした。
「講義」と「抗議」はどう違いますか
読みは同じ「こうぎ」ですが、意味も字も別の言葉です。なお、現行の法令を検索したところ「抗議」は0件で、法令では使われていませんでした。
「講義」と「授業」はどちらを使えばいいですか
大学設置基準では「授業」が大きな言葉で、「講義」はその方法の1つです(第25条)。時間割全体を指すなら「授業」、話を聞いて学ぶ形を指すなら「講義」が合います。
「講義室」という言い方はありますか
あります。法令にも38件あり、医療法や水先法、船舶職員及び小型船舶操縦者法などで、備えるべき施設として挙げられています。専修学校設置基準第46条第1項も、教室を「講義室、演習室、実習室等」と書いています。
「講座」とはどう違いますか
「講座」は法令に106件あります。社会教育法第5条は「講座の開設及び討論会、講習会、講演会、展示会その他の集会の開催」と書いており、講座は開設するもの、講演会などは開催するものとして並べられています。
「聴講」も法令にありますか
9件ありました。大学通信教育設置基準の「聴講生」や、学校法人会計基準の「聴講料」などです。常用漢字表でも「講」の例に「聴講」が挙がっています。
法令で「講義」がいちばん多いのはどの分野ですか
資格や免許の講習です。公害防止組織の整備に関する法律施行規則(11件)、介護保険法施行規則(11件)、建築士法に基づく中央指定登録機関等に関する省令(10件)、宅地建物取引業法施行規則(9件)などが上位でした。
まとめ
正しいのは「講義」です。「講議」は常用漢字表の例にも、現行の法令306件の中にも出てきません。
常用漢字表の「講」の例は「講義,講演,聴講」。「議」の例は「議論,会議,異議」で、話し合いに関わる言葉です。
「講義」と「授業」は、大学設置基準第25条が「授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより…行う」と定めています。授業が大きな言葉で、講義はその方法の1つです。
法令の「講義」は、資格の講習のやり方を定める場面で多く使われていました。
「こうぎ」は「講義」、反対の意思を伝えるときだけ「抗議」と覚えておけば、迷わずに書き分けられます。
