「問題のこんぽん」「木のねもと」。
「根本」と「根元」は字が似ていて、どちらを書けばいいのか迷うことがあります。
結論を先にお伝えすると、「根本」は物事の土台・おおもと、「根元」は根に近い部分・付け根です。
目に見えない物事の土台なら「根本」、目で見て指させる付け根なら「根元」と考えると分かりやすくなります。
実際の法令を数えてみると、「根本」は113件、「根元」は3件でした。
「根本」は「任免の根本基準」「根本的な解決」のような制度や問題の土台の話、「根元」は「苗木の根元径」「たけのこの根元」のような植物の付け根の話です。
この記事では、国の「異字同訓」の資料と常用漢字表、法令の件数と条文をそのまま示しながら整理します。
「根本」と「根元」の違いは?結論から
- 根本(こんぽん)… 物事の土台・おおもと(例:問題の根本、根本的な解決、根本から見直す)
- 根元(ねもと)… 根に近い部分、付け根(例:木の根元、髪の根元、苗木の根元)
見分け方は、その「もと」が目で見える場所かどうかです。
木や草、髪の毛のように、実際に指させる付け根なら「根元」。原因や制度のように、形のない物事の土台なら「根本」を選べば、法令と同じ書き方になります。
ここから、その根拠を順に見ていきます。
国の資料で見る:「元」は近くの場所、「本」は根幹
「根本」と「根元」の違いは、後ろの字「本」と「元」の違いです。
どちらも「もと」と読む字で、国の資料「『異字同訓』の漢字の使い分け例」が、この2つを含む「もと」の使い分けを示しています。
【元】物事が生じる始まり。以前。近くの場所。もとで。 口は災いの元。過労が元で入院する。火の元。家元。出版元。元の住所。元首相。 親元に帰る。手元に置く。お膝元。元が掛かる。
【本】(⇔末)。物事の根幹となる部分。 生活の本を正す。本を絶つ必要がある。本を尋ねる。
出典:文化審議会国語分科会「『異字同訓』の漢字の使い分け例」(平成26年)「もと(下・元・本・基)」の項/2026年9月15日確認
「元」の説明には「近くの場所」とあり、例に「手元に置く」「親元に帰る」「お膝元」が並んでいます。
根元も同じで、根の近くの場所、つまり付け根のことです。
いっぽう「本」は「(⇔末)。物事の根幹となる部分」。「本と末」の本で、枝葉に対する幹のような、物事のおおもとです。
根本は、この「本」に「根」を重ねた言葉で、物事の根っこ、土台を表します。
「もと」と読む字は4つある:下・元・本・基
同じ項には、「元」「本」のほかに「下」と「基」も並んでいます。
【下】影響力や支配力の及ぶ範囲。…という状態・状況で。物の下の辺り。 法の下に平等。ある条件の下で成立する。一撃の下に倒した。花の下で遊ぶ。 真実を白日の下にさらす。灯台下暗し。足下(元)が悪い*。
【基】基礎・土台・根拠。 資料を基にする。詳細なデータを基に判断する。これまでの経験に基づく。
出典:文化審議会国語分科会「『異字同訓』の漢字の使い分け例」(平成26年)「もと(下・元・本・基)」の項/2026年9月15日確認
「もと」と読む字は4つあり、下=下の辺り、元=始まり・近くの場所、本=根幹、基=土台・根拠と使い分けられています。
根元の「元」は2つ目、根本の「本」は3つ目にあたります。
この項には、次のような注もついています。
「足もと」の「もと」は,「足が地に着いている辺り」という意で「下」を当てるが,「足が着いている地面の周辺(近くの場所)」という視点から捉えて,「元」を当てることもできる。
出典:文化審議会国語分科会「『異字同訓』の漢字の使い分け例」(平成26年)「もと」の項の注/2026年9月15日確認
「近くの場所」という見方をすれば「元」になる、という説明です。根元も、根の近くの場所と捉えて「元」を当てた言葉だと分かります。
国の「異字同訓」の資料で漢字の使い分けを確かめた話としては、「慣れる」と「馴れる」の違いは?や「生まれる」と「産まれる」の違いは?もあわせてご覧ください。
常用漢字表で見る:「根本」は音読み、「根元」は訓読み
国が定めた常用漢字表で、3つの字の読みと例を確かめました。
- 根 … 音:コン。例:根拠,根気,平方根/訓:ね。例:根,根強い,屋根
- 本 … 音:ホン。例:本質,本来,資本/訓:もと。例:本,旗本
- 元 … 音:ゲン。例:元素,元気,多元/ガン。例:元祖,元日,元来/訓:もと。例:元,元帳,家元
出典:常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)本表/2026年9月15日確認
「根本」はコン+ホンで「こんぽん」と音読み、「根元」はね+もとで「ねもと」と訓読みです。
3つの字はどれも常用漢字なので、どちらの言葉も漢字で書けます。ただ、「根本」も「根元」も、常用漢字表の例には挙がっていません。
法令の数字:「根本」113件、「根元」3件
では、実際の法令ではどう使われているのか。e-Gov法令検索で、現行の法令を横断検索しました(2026年9月15日確認)。
- 根本 … 113件(56の法令)
- 根元 … 3件(3つの法令)
件数は、その言葉を含む箇所の数です
「根本」は「根元」の30倍以上。出てくる法令の数も、56対3です。
「根本」が多いのは、公務員と電波の法令
- 国家公務員法 … 18件
- 地方公務員法 … 7件
- 電波法 … 6件
- 電波法施行規則 … 6件
- 無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準 … 4件
「根本」を含む箇所の数(附則などを含む)/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
言い回しで見る:「根本基準」「根本的」
- 根本基準 … 56件
- 根本的 … 34件(うち「根本的基準」21件)
- 根元の … 1件
e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
「根本」の半分近くは「根本基準」です。法令の中の「根本」は、多くが制度や決まりの土台を言う言葉として使われています。
題名に入っているのは「根本」だけ
- 題名に「根本」を含む法令 … 4本(無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準、基幹放送局の開設の根本的基準、人事院規則一〇―六(職員のレクリエーションの根本基準)、特定無線局の開設の根本的基準)
- 題名に「根元」を含む法令 … 0本
e-Gov法令検索の法令一覧から、題名に含む文字で数えたもの(2026年9月15日確認)
法令の件数から言葉の書き分けを確かめた話としては、「習得」と「修得」の違いは?もあわせてご覧ください。
「根本」は制度の土台:国家公務員法の「根本基準」
「根本」をいちばん多く使っているのは、国家公務員法です。第1条から「根本基準」が出てきます。
この法律は、国家公務員たる職員について適用すべき各般の根本基準(職員の福祉及び利益を保護するための適切な措置を含む。)を確立し、職員がその職務の遂行に当り、最大の能率を発揮し得るように、民主的な方法で、選択され、且つ、指導さるべきことを定め、以て国民に対し、公務の民主的且つ能率的な運営を保障することを目的とする。
出典:国家公務員法(昭和22年法律第120号)第1条第1項(この法律の目的及び効力)/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
さらに、条文の見出しにも「根本基準」が並んでいます。
- 第33条(任免の根本基準)
- 第62条(給与の根本基準)
- 第70条の2(人事評価の根本基準)
- 第70条の5(研修の根本基準)
- 第71条(能率の根本基準)
- 第74条(分限、懲戒及び保障の根本基準)
出典:国家公務員法(昭和22年法律第120号)の各条の見出し/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
任免・給与・人事評価・研修……。公務員の制度のおおもとになる決まりを、どれも「根本基準」と呼んでいます。国家公務員法の全文では「根本」が19回、「根元」は0回でした。
地方公務員法も、第1条で「団体等人事行政に関する根本基準を確立すること」と書いています。
地方公共団体は、法律に特別の定がある場合を除く外、この法律に定める根本基準に従い、条例で、人事委員会又は公平委員会の設置、職員に適用される基準の実施その他職員に関する事項について必要な規定を定めるものとする。
出典:地方公務員法(昭和25年法律第261号)第5条第1項/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
国の法律が「根本基準」という土台を定め、それに従って各地の条例が細かい決まりを作る、という関係です。
人事院規則にも、昭和39年の「人事院規則一〇―六(職員のレクリエーションの根本基準)」のように、題名に「根本基準」が入ったものがあります。
無線局の「根本的基準」
前三号に掲げるもののほか、総務省令で定める無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準に合致すること。
出典:電波法(昭和25年法律第131号)第7条第1項第4号(申請の審査)/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
無線局を開くときの審査で、「根本的基準に合致すること」を求めています。この「無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準」は、それ自体が法令の題名にもなっています。
問題の「根本的な解決」、事故の「根本原因分析」
新しい法律では、問題の原因の奥にあるものを「根本」と書いています。
…アルコール健康障害に関連して生ずるこれらの問題の根本的な解決に資するため、これらの問題に関する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮がなされるものとすること。
出典:アルコール健康障害対策基本法(平成25年法律第109号)第3条第1項第2号(基本理念)の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
平成30年のギャンブル等依存症対策基本法も、第3条で同じく「これらの問題の根本的な解決に資するため」と書いています。
原子力発電所の規則にも、保安規定に定める事項として「根本原因分析の方法及びこれを実施するための体制」という言葉が出てきます(実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の附則など)。
後ろに続く言葉で使い分けを確かめた話としては、「並行」と「平行」の違いは?もあわせてご覧ください。
昭和14年の閣議決定の名前にも「根本方策」
古い政府の決定の名前にも「根本」が出てきます。
戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和27年)、引揚者給付金等支給法(昭和32年)、戦傷病者特別援護法(昭和38年)など現行の5つの法令が、「昭和十四年十二月二十二日の閣議決定満洲開拓民に関する根本方策に関する件」という決定の名前を引用していました(e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認)。
「根本方策」は、政策のおおもとになる方針という意味です。ここでも「根本」は、形のない物事の土台を言う言葉として使われています。
「根元」は植物の付け根:苗木の根元径、たけのこの根元
いっぽう「根元」の3件は、すべて植物の付け根の話でした。
令別表第二の第三号(一)の基準は、満一年未満の苗にあっては、同一の樹種の満一年以上の苗と同等の根元径及び苗長を有するものであることとする。
出典:森林法施行規則(昭和26年農林省令第54号)第57条第1項(植栽の方法)/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
「根元径」は、苗木の根元の太さ(直径)のことです。木を植えるときの苗の基準として、苗の高さ(苗長)と並べて出てきます。
…苗木にあつては根元径及び苗長についての規格並びにその検査機関名及び検査年月日
出典:林業種苗法施行規則(昭和45年農林省令第40号)第21条第1項第2号の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
もう1つは、食品の表示のルールです。食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の別表第三は、たけのこについて「皮及び根元の硬い部分を除去したもの」と書いています。
苗木の根元、たけのこの根元。手で触れる、目で見える付け根が「根元」です。「根元」は法令の題名には1本も入っていません。
例外:足場の「建地の根本」
ただ、法令の「根本」がすべて抽象的な意味というわけではありません。1つだけ、目に見える付け根を「根本」と書いている条文がありました。
建地の脚部には、その滑動又は沈下を防止するため、建地の根本を埋め込み、根がらみを設け、皿板を使用する等の措置を講ずること。
出典:労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第569条第1項第2号/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
「建地」は、工事の足場を支える柱のことです。その下の端(付け根)を埋め込むことを、「建地の根本を埋め込み」と書いています。
今の書き分けに当てはめれば「根元」になるところで、法令でも字が揺れている例と言えます。
また、法令の「根本」には、静岡県の「川根本町」のように、地名の一部として出てくるものも含まれています。
迷ったときの使い分け
目で見える付け根なら「根元」
木や草の根元、髪の毛の根元、柱の根元のように、実際に指させる付け根は「根元」です。
法令でも、苗木の「根元径」、たけのこの「根元の硬い部分」と書かれています。
物事の土台・原因なら「根本」
問題の根本、根本的な解決、根本から見直す、根本原因のように、形のない物事の土台や原因は「根本」です。
法令でも「根本基準」「根本的な解決」「根本原因分析」と書かれています。
場面ごとの例
- 根本 … 問題の根本/根本的な解決/根本から見直す/根本原因/根本基準/根本的に考える
- 根元 … 木の根元/苗木の根元/髪の根元/柱の根元/たけのこの根元
迷ったら、「それを指でさせるか」を考えます。指させる付け根なら「根元」、指させない物事の土台なら「根本」です。
よくある質問
「根本」と「根元」は読み方が違いますか
ふつうは違います。「根本」は音読みで「こんぽん」、「根元」は訓読みで「ねもと」です。常用漢字表でも、「根」の音は「コン」、訓は「ね」、「本」の音は「ホン」、「元」の訓は「もと」とされています。
「髪の根元」と「髪の根本」はどちらですか
髪の毛の付け根は目に見える場所なので「根元」です。国の「異字同訓」の資料でも、「元」は「近くの場所」とされ、「手元」「親元」の例が挙がっています。
「根本的」は「根元的」ではないのですか
「根本的」です。法令にも「根本的」は34件あり、「根本的な解決」「根本的基準」と書かれています。
法令ではどちらが多く使われていますか
現行の法令では「根本」が113件(56の法令)、「根元」が3件(3つの法令)です。「根本」の半分近くは「根本基準」で、「根元」の3件はすべて植物の付け根(苗木の根元径、たけのこの根元)でした。
「根元」を「根本」と書くのは間違いですか
法令にも、足場の柱の付け根を「建地の根本」と書いた例が1つあります(労働安全衛生規則第569条)。ただ、国の「異字同訓」の資料は「元」を「近くの場所」、「本」を「物事の根幹となる部分」としているので、目に見える付け根は「根元」と書くのが分かりやすい書き方です。
「足元」と「足下」はどちらですか
国の「異字同訓」の資料は、「足が地に着いている辺り」という意味なら「下」、「足が着いている地面の周辺(近くの場所)」と捉えるなら「元」を当てることもできる、としています。どちらも使える書き方です。
「根源」とはどう違いますか
「根源」も物事のおおもとを言う言葉ですが、現行の法令には1件も出てきませんでした。法令で物事の土台を言うときは、「根本」や「根幹」(92件)が使われています。
まとめ
「根本」は物事の土台・おおもと、「根元」は根に近い部分・付け根です。
国の「異字同訓」の資料でも、「本」は「物事の根幹となる部分」、「元」は「近くの場所」とされています。
法令では「根本」が113件、「根元」が3件。「根本」は国家公務員法の「根本基準」や「根本的な解決」、「根元」は苗木の「根元径」やたけのこの「根元」でした。
ただ、労働安全衛生規則の「建地の根本」のように、目に見える付け根を「根本」と書いた例も1つあります。
指させる付け根なら「根元」、形のない物事の土台なら「根本」と覚えておけば、迷わずに書き分けられます。
