「親族が集まる」「親戚が集まる」。
どちらもよく使う言葉ですが、どこが違うのかと聞かれると、はっきり答えにくい言葉です。
結論を先にお伝えすると、「親族」は民法で範囲が決まっている言葉、「親戚」は範囲を決めた法令がない日常の言葉です。
今回は、民法の条文を確かめたうえで、現行の法令をすべて横断検索して数えました。
すると、「親族」は2,668件あるのに、「親戚」は1件もありませんでした。
さらに、「親族」をいちばん多く使っている法律は、民法ではなく所得税法でした。
この記事では、条文と数字をそのまま示しながら、「親族」と「親戚」、そして「家族」の違いを整理します。
「親族」と「親戚」の違いは?結論から
- 親族 … 民法第725条で範囲が決まっている言葉(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)
- 親戚 … 範囲を決めた法令がない言葉。日常の会話で、血のつながりや結婚でつながる人を指して使う
使い分けの目安は次のとおりです。
- 書類や手続きで、範囲がはっきりしている必要があるとき … 親族(例:同居の親族、三親等内の親族、扶養親族)
- 日常の会話で、つながりのある人をゆるやかに指すとき … 親戚(例:親戚の集まり、親戚付き合い)
ここから、それぞれの根拠を順に見ていきます。
「親族」の範囲は民法第725条で決まっている
「親族」は、民法がはっきり範囲を決めている言葉です。
(親族の範囲)
第七百二十五条 次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族出典:民法 第725条(e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認)
つまり親族は、血のつながりのある人(血族)は6親等まで、結婚でつながった人(姻族)は3親等まで、そして配偶者です。
配偶者だけは「何親等」という限定がなく、それだけで親族に入っています。
- 血族 … 血のつながりのある人。養子と養親、養親の血族との間にも、縁組の日から血族と同じ親族関係が生じます(民法第727条)
- 姻族 … 結婚によってつながった人。たとえば配偶者の父母や兄弟姉妹、自分の兄弟姉妹の夫や妻です
親等の数え方も、条文に書いてある
「何親等」の数え方も、民法が決めています。
(親等の計算)
第七百二十六条 親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
2 傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。出典:民法 第726条(e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認)
親と子の間が1親等です。
兄弟姉妹やおじ・おばのような横のつながり(傍系)は、いったん共通の祖先までさかのぼってから、下りて数えます。
- 兄弟姉妹 … 自分→親(1)→兄弟姉妹(2)で 2親等
- おじ・おば … 自分→親(1)→祖父母(2)→おじ・おば(3)で 3親等
- いとこ … おじ・おばから、もう1つ下りて 4親等
血族を親等ごとに並べると、次のようになります。
- 1親等 … 父母、子
- 2親等 … 祖父母、孫、兄弟姉妹
- 3親等 … 曾祖父母、曾孫、おじ・おば、甥・姪
- 4親等 … 高祖父母、玄孫、いとこ、大おじ・大おば、甥・姪の子
- 5親等 … いとこの子 など
- 6親等 … いとこの孫、はとこ など
「いとこの孫」や「はとこ」まで、法律の上では親族に入ります。
姻族は3親等までです。
第726条第2項に「その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり」とあるとおり、配偶者の側の人は、配偶者を起点にして数えます。
- 1親等 … 配偶者の父母、配偶者の子、子の配偶者
- 2親等 … 配偶者の祖父母・兄弟姉妹・孫、兄弟姉妹の配偶者、孫の配偶者
- 3親等 … 配偶者の曾祖父母・おじ・おば・甥・姪・曾孫、おじ・おばの配偶者、甥・姪の配偶者
たとえば配偶者のいとこは4親等にあたるので、「三親等内の姻族」に入らず、民法の親族にはなりません。
血族は6親等まで、姻族は3親等までと、線を引く位置が違うのです。
離婚すると姻族ではなくなる
姻族には、終わり方の決まりもあります。
(離婚等による姻族関係の終了)
第七百二十八条 姻族関係は、離婚によって終了する。
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。出典:民法 第728条(e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認)
離婚すれば、配偶者の親や兄弟姉妹との姻族関係は終わります。
配偶者が亡くなった場合は、残された側が終わらせる意思を表示したときに終わります。
法令に「親戚」は1件もない
では、法令の中で「親戚」はどう使われているのか。
e-Gov法令検索で、現行の法令を横断検索しました(2026年9月13日確認)。
- 親族 … 2,668件(615の法令)
- 親戚 … 0件
- 親せき … 0件
- 親類 … 0件
- 縁者・遠縁・身寄り … いずれも0件
件数は、その言葉を含む箇所の数です
漢字でも、ひらがなまじりでも、「親戚」は1件もありません。似た言葉の「親類」も0件でした。
「身内」は2件ヒットしましたが、どちらも警察官や交通巡視員の制服の仕様を定めた規則の中の「前身内」という語でした。
家族や親類を指す意味の「身内」ではありません。
民法の中の回数も数えてみた
民法の本則(附則を除いた本体)で、それぞれの文字が何回出てくるかを数えました。
- 親族 … 59回
- 血族 … 18回
- 親等 … 15回
- 姻族 … 7回
- 親戚・親類 … 0回
- 家族 … 0回
民法(明治29年法律第89号)の本則を e-Gov法令検索のデータから数えたもの。「直系血族」「親族関係」のような言葉の一部も1回と数えています/2026年9月13日確認
民法は人のつながりを、「親族」「血族」「姻族」と、その距離をはかる「親等」で書き分けています。
「親戚」も「家族」も、民法の本体には1回も出てきません。
法令を数えて言葉の使われ方を確かめた話としては、「利用」と「使用」の違いは?もあわせてご覧ください。
「親戚」は常用漢字で書ける言葉
法令に出てこないのは、漢字の決まりで書けないからではありません。
国が定めた常用漢字表の本表を確かめると、「戚」はきちんと入っています。
- 戚 … 音:セキ / 例:親戚
出典:常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)本表/2026年9月13日確認
しかも、「戚」の例として挙がっている言葉は「親戚」ただ一つです。
「親戚」は、常用漢字表の上では何の問題もなく漢字で書ける言葉なのです。
「蘇る」「甦る」は、そもそも2字とも常用漢字表にない字でした。
「親戚」は、字の上では書けるのに、法令が使っていない言葉ということになります。
常用漢字表にない字の話は、「蘇る」と「甦る」の違いは?もあわせてご覧ください。
「親族」をいちばん使っている法律は所得税法
「親族」を含む2,668件を、法令ごとに数え直しました。
- 所得税法 … 190件
- 租税特別措置法施行令 … 130件
- 地方税法施行令 … 96件
- 所得税法施行令 … 95件
- 地方税法 … 94件
- 所得税法施行規則 … 78件
- 地方税法施行規則 … 76件
- 民法 … 61件
e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認。件数は「親族」を含む箇所の数で、前の節の「回数」とは数え方が違います
上位7つは、すべて税の法令です。親族の範囲を決めている民法は、8番目でした。
所得税法の「扶養親族」は「親族」から始まる
税の法令には、「扶養親族」という言葉が繰り返し出てきます。
「扶養親族」だけで、法令全体で747件ありました。
所得税法は、扶養親族を次のように定めています。
三十四 扶養親族 居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)並びに児童福祉法…の規定により…里親に委託された児童及び老人福祉法…の規定により…養護受託者に委託された老人でその居住者と生計を一にするもの(…)のうち、合計所得金額が五十八万円以下である者をいう。
出典:所得税法 第2条第1項第34号(一部省略)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
税の扶養の話で出てくる「扶養親族」は、「居住者の親族」から始まる定義です。
ここでも使われているのは、「親戚」ではなく「親族」です。
この条文には、ほかにも読みどころがあります。
- 配偶者は除かれている … 配偶者は、すぐ前の第33号「同一生計配偶者」など、別の言葉で扱われます
- 親族でなくても入る人がいる … 里親に委託された児童や、養護受託者に委託された老人も、生計を一にしていれば含まれます
- 所得の条件がある … 合計所得金額が58万円以下であること(2026年9月13日時点の条文)
法令の数字で言葉を確かめた話としては、「不要」と「不用」の違いは?もあわせてご覧ください。
刑法には「親族」で扱いが変わる特例がある
(親族間の犯罪に関する特例)
第二百四十四条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。出典:刑法 第244条(e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認)
第235条は窃盗、第235条の2は不動産侵奪の罪です。
配偶者・直系血族・同居の親族との間なら刑が免除され、それ以外の親族との間なら、告訴がなければ起訴できない。
同じ行為でも、相手が「親族」かどうか、どの親族かで扱いが変わる仕組みです。
刑法第105条にも、「親族」の特例があります。
犯人をかくまう罪(第103条・犯人蔵匿等)や、証拠を隠す罪(第104条・証拠隠滅等)を、犯人の親族がその犯人の利益のために犯したときは、「その刑を免除することができる」とされています。
第244条は「免除する」、第105条は「免除することができる」。同じ「親族」の特例でも、言い切り方が違います。
証言を拒める範囲は「親等」で決まっている
第百四十七条 何人も、左に掲げる者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる。
一 自己の配偶者、三親等内の血族若しくは二親等内の姻族又は自己とこれらの親族関係があつた者出典:刑事訴訟法 第147条(一部省略)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
ここは血族が3親等まで、姻族が2親等までです。
民法の親族(血族6親等・姻族3親等)より狭い範囲を、「親等」を使って切り出しています。
民法の中で「親族」が効いてくる条文
- 第730条 … 直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない
- 第877条 … 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。特別の事情があるときは、家庭裁判所が三親等内の親族にも扶養の義務を負わせることができる
- 第734条 … 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない(養子と養方の傍系血族との間は除く)
- 第1050条 … 無償で療養看護などをして特別の寄与をした被相続人の親族(相続人などを除く)は、相続人に「特別寄与料」を請求できる
出典:民法 各条(要約・一部抜粋)/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
第730条の「扶け合い」には振り仮名が付いている
e-Gov法令検索のデータで第730条を見ると、「扶」の字に「たす」という振り仮名が付いています。見出しの「親族間の扶け合い」も同じです。
常用漢字表の本表で「扶」を確かめると、読みは音の「フ」だけで、例は「扶助,扶養,扶育」です。
「たすける」という訓は載っていません。
ア 専門用語等であって,他に言い換える言葉がなく,しかも仮名で表記すると理解することが困難であると認められるようなものについては,その漢字をそのまま用いてこれに振り仮名を付ける。
出典:内閣法制局「法令における漢字使用等について」(平成22年11月30日)1(5)ア。1(5)は、常用漢字表にない漢字や、常用漢字表にない音訓を用いる言葉の扱いを定めたもの/2026年9月13日確認
第730条の「扶け合い」は、常用漢字表にない読みの字に振り仮名を付けた形になっています。
「家族」は民法に1回も出てこない
「親族」「親戚」とよく並べられるのが「家族」です。
こちらも法令を数えました(2026年9月13日確認)。
- 家族 … 法令全体で 2,716件(382の法令)
- そのうち民法 … 0件
- そのうち所得税法 … 0件
「家族」は法令にたくさん出てくるのに、民法と所得税法には1件もありません。
多かったのは、介護サービスの事業の基準を定めた省令(95件・87件など)、健康保険法(85件)、未帰還者留守家族等援護法(82件)、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(73件)でした。
介護・保険・休業の法令に集まっています。
憲法には「家族」が出てきます。
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
出典:日本国憲法 第24条第2項/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
育児・介護休業法は「家族」を自分で定義している
民法に「家族」は出てきませんが、法律によっては、その法律の中での「家族」を自分で決めています。
たとえば、育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)です。
四 対象家族 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、父母及び子(これらの者に準ずる者として厚生労働省令で定めるものを含む。)並びに配偶者の父母をいう。
五 家族 対象家族その他厚生労働省令で定める親族をいう。出典:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第2条第4号・第5号/e-Gov法令検索にて2026年9月13日確認
この法律の「家族」は、「対象家族」と、厚生労働省令で定める親族です。
「対象家族」の配偶者には、婚姻の届出をしていない事実婚の相手も含むと、わざわざ書いてあります。
法令を数えて言葉を確かめた話としては、「科学」と「化学」の違いは?もあわせてご覧ください。
「親族」「親戚」「家族」の使い分け
- 親族 … 範囲が民法第725条で決まっている。書類・手続き・税・相続で使う言葉
- 親戚 … 範囲を決めた法令がない。日常の会話で使う言葉
- 家族 … 民法には出てこない。法律によっては、その法律の中だけの範囲を決めている
書類で範囲を問われているなら「親族」
「同居の親族」「三親等内の親族」「扶養親族」など、範囲をはっきりさせたい場面は「親族」です。
書類に「親族」とあれば、何親等までを指しているかを確かめると迷いません。
あいさつや会話なら「親戚」
「親戚の集まり」「親戚にあいさつに行く」など、日常の会話では「親戚」で問題ありません。
常用漢字表で「戚」の例に挙がっている、ごく普通の言葉です。
「家族」は、どの法律の話かで範囲が変わる
「家族」は民法に定義がありません。
介護休業のような制度の話なら、その制度の法律が「家族」の範囲をどう決めているかを確かめる必要があります。
法令の決まりと実際の条文を比べた話としては、「作成」「作製」「制作」「製作」の違いは?もあわせてご覧ください。
法令を数えて言葉の使われ方を確かめた話としては、「侵食」と「浸食」の違いは?もあわせてご覧ください。
法令を数えて言葉の使われ方を確かめた話としては、「規定」と「規程」の違いは?もあわせてご覧ください。
よくある質問
いとこは親族ですか
はい。いとこは4親等の血族なので、民法第725条の「六親等内の血族」に入ります。
はとこは親族ですか
はい。はとこは6親等の血族なので、「六親等内の血族」に入ります。親族に入る血族の中では、いちばん外側です。
配偶者の兄弟姉妹は親族ですか
はい。配偶者の兄弟姉妹は2親等の姻族なので、「三親等内の姻族」に入ります。
配偶者のいとこは親族ですか
いいえ。配偶者のいとこは、配偶者を起点に数えて4親等にあたります。民法第725条の「三親等内の姻族」には入りません。
離婚した相手の親は、親族のままですか
いいえ。民法第728条で、姻族関係は離婚によって終了すると定められています。
「親戚」と書くのは間違いですか
間違いではありません。「戚」は常用漢字で、常用漢字表の本表には「親戚」が例として挙がっています。法令では使われていませんが、日常の文章なら「親戚」で問題ありません。
法令に「親戚」が出てこないのはなぜですか
理由までは法令から分かりません。確かめられるのは、現行の法令で「親戚」「親せき」「親類」がすべて0件で、人のつながりは「親族」「血族」「姻族」で書かれている、ということです。
まとめ
「親族」は民法第725条で範囲が決まっている言葉です。6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族が親族です。
「親戚」は範囲を決めた法令がない言葉で、現行の法令には1件も出てきません。
それでも「戚」は常用漢字で、常用漢字表には「親戚」が例として挙がっています。書けないのではなく、法令が使っていないのです。
「親族」をいちばん使っている法律は所得税法(190件)で、民法(61件)より多く、上位7つはすべて税の法令でした。
「家族」は法令全体で2,716件ありながら、民法と所得税法には0件です。
書類や手続きなら「親族」、日常の会話なら「親戚」、と覚えておけば迷いません。

