「2つの作業をへいこうして進める」「へいこうな2本の線」。
同じ「へいこう」でも、「並行」と「平行」のどちらを書けばいいのか迷います。
結論を先にお伝えすると、「並行」は並んで進むこと・同時に行うこと、「平行」はどこまでいっても交わらない線や面の関係です。
仕事や作業を同時に進めるなら「並行」、線や向きの話なら「平行」になります。
実際の法令を数えてみると、「平行」は104件、「並行」は24件でした。
「平行」は「中心線に平行」「平行線」「平行駐車」のような線や向きの話、「並行」は「並行して行われ」のような同時進行の話が中心です。
ところが、1つの規則の中で「並行」「平行」「併行」の3つを使っている例も見つかりました。
この記事では、常用漢字表と法令の件数、条文をそのまま示しながら整理します。
「並行」と「平行」の違いは?結論から
- 並行 … 並んで進むこと、同時に行うこと(例:2つの作業を並行して進める、線路に並行する道路)
- 平行 … 2本の線や2つの面がどこまでいっても交わらないこと(例:平行線、中心線に平行に引く、平行駐車)
見分け方は、「同時に進む」話か、「線や向き」の話かです。
時間の流れの中で2つのことが同時に進むなら「並行」、形や方向として交わらないなら「平行」を選べば、法令と同じ書き方になります。
ここから、その根拠を順に見ていきます。
漢字で見る:常用漢字表の「並」の例に「並行」がある
国が定めた常用漢字表で、2つの字の例の言葉を確かめました。
- 並 … 音:ヘイ。例:並行,並列,並立/訓:なみ・ならべる・ならぶ・ならびに。例:並の品,並木,足並み,並べる,並ぶ,並びに
- 平 … 音:ヘイ。例:平面,平和,公平/ビョウ。例:平等/訓:たいら・ひら。例:平らな土地,平手
出典:常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)本表/2026年9月15日確認
「並」の音の例には、「並行」そのものが挙がっています。並列・並立と同じく、並んで立つ、並んで進むことを表す字です。
いっぽう「平」の例は平面・平和・公平で、「平行」は例に入っていません。「平」は平ら・平面の字です。
「並んで行く」のが並行、「平らに(交わらずに)行く」のが平行、と字の意味から覚えることができます。
常用漢字表の例に言葉そのものが挙がっていた話としては、「敷設」と「布設」の違いは?もあわせてご覧ください。
法令の数字:「平行」104件、「並行」24件
では、実際の法令ではどう使われているのか。e-Gov法令検索で、現行の法令を横断検索しました(2026年9月15日確認)。
- 平行 … 104件(58の法令)
- 並行 … 24件(14の法令)
- 併行 … 4件(3つの法令)
件数は、その言葉を含む箇所の数です。題名にこの3つを含む法令は0本でした
法令では「平行」が「並行」の4倍以上。道路、船、航空、測量などの技術的な決まりに、線や面の向きを定める言葉として多く出てきます。
「平行」が多いのは、道路・船・航空の法令
- 道路標識、区画線及び道路標示に関する命令 … 7件
- 船舶のトン数の測度に関する法律施行規則 … 6件
- 土壌汚染対策法施行規則 … 6件
- 航空法施行規則 … 5件
- 木材統計調査規則 … 4件
「平行」を含む箇所の数(附則などを含む)/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
「並行」が多いのは、有価証券の開示と補助犬の法令
- 企業内容等の開示に関する内閣府令 … 5件
- 特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令 … 3件
- 身体障害者補助犬法施行規則 … 3件
- 漁船検査規則 … 2件
- 外国債等の発行者の内容等の開示に関する内閣府令 … 2件
「並行」を含む箇所の数(附則などを含む)/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
「並行」の上位は、有価証券の募集や売出しが同時に行われる場合の決まりや、補助犬の訓練を同時に進める決まりです。
2つの字は、出てくる法令の顔ぶれからして違っています。
言い回しで見る:「平行に」「平行な」と「並行して」
2つの字の後ろにどんな言葉が続くかを、法令全体で数えました(2026年9月15日確認)。
- 平行に … 32件 / 並行に … 2件
- 平行な … 28件
- 平行線 … 5件
- 並行して … 18件 / 平行して … 11件
- 平行する … 5件 / 並行する … 3件
e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
「平行に」「平行な」は、線や面の向きを言うときの形です。「〇〇に平行に引いた線」「〇〇に平行な直線」のように使われます。
いっぽう「並行して」は、何かと同時に進めるときの形です。「並行して行われる」「並行して行うことができる」と続きます。
「平行して」も11件ありますが、これは「平行している一対の電車線」のように、線が平行に並んでいる状態を言う形が含まれています。
「平行」は線と面の話:小切手、滑走路、電車線、駐車
小切手の「線引き」は2本の平行線
線引ハ小切手ノ表面ニ二条ノ平行線ヲ引キテ之ヲ為スベシ線引ハ一般又ハ特定タルコトヲ得
出典:小切手法(昭和8年法律第57号)第37条第2項/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
小切手の表に「2本の平行線」を引くことを、線引きと言います。昭和8年の小切手法から、線の話は「平行」です。
滑走路まわりの空間も「平行な直線」
延長進入表面は、進入表面を含む平面のうち、進入表面の外側底辺、進入表面の斜辺の外側上方への延長線及び当該底辺に平行な直線でその進入表面の内側底辺からの水平距離が一万五千メートルであるものにより囲まれる部分とする。
出典:航空法(昭和27年法律第231号)第56条第2項/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
空港のまわりの「延長進入表面」という範囲を、「底辺に平行な直線」などで囲んで決めています。
トロリーバスの電車線、そして「平行駐車」
平行している一対の電車線の中心間隔は、一・四メートル以上でなければならない。
出典:無軌条電車建設規則(昭和25年運輸省・建設省令第1号)第24条第1項(見出しは「平行している電車線の中心間隔」)/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
道路の標識や標示を定めた「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」には、「平行駐車」が全文で11回出てきます。車道の縁に平行に止める駐車のしかたで、これも「平行」です。
この命令の全文では「平行」が19回、「並行」は0回でした。
「平行」の前によく来る言葉は、「中心線に」「喫水線に」「X軸に」など。基準になる線や軸に対して交わらない向きを言うときに使われています。
「並行」は同時に進むこと:有価証券、補助犬、財政
有価証券の募集が「並行して行われ」
…同一の種類の有価証券でその発行価額又は売出価額の総額が一億円未満である二組以上の募集又は売出しが並行して行われ…
出典:企業内容等の開示に関する内閣府令(昭和48年大蔵省令第5号)第2条第5項第4号の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
2つ以上の募集が同じ時期に進んでいることを「並行して行われ」と書いています。線の話ではないので「並行」です。
補助犬の訓練は「並行して行うことができる」
この場合において、第一号に掲げる基礎訓練及び第二号に掲げる歩行誘導訓練は、並行して行うことができる。
出典:身体障害者補助犬法施行規則(平成14年厚生労働省令第127号)第1条第1項(盲導犬の訓練基準)の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
盲導犬の基礎訓練と歩行誘導訓練を、同時に進めてよいという決まりです。
国と「並行して」地方も財政改革
地方公共団体は、第四条第一号に掲げる財政構造改革の当面の目標の達成に資するよう、国の財政構造改革の推進に関する施策に呼応し、及び並行して、財政構造改革に努め、その財政の自主的かつ自立的な健全化を図るものとする。
出典:財政構造改革の推進に関する特別措置法(平成9年法律第109号)第39条第1項/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
道路に「並行して」設ける副道
「並行」には、何かに沿って並んで走るという使い方もあります。道路構造令は「副道」を次のように定義しています。
副道 盛土、切土等の構造上の理由により車両の沿道への出入りが妨げられる区間がある場合に当該出入りを確保するため、当該区間に並行して設けられる帯状の車道の部分をいう。
出典:道路構造令(昭和45年政令第320号)第2条第1項第11号/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
本線の道路に沿って並んで走る車道なので「並行」。幾何学的に交わらないことより、並んで続いていることに重点がある書き方です。
分野によって字が分かれていた話としては、「生育」と「成育」の違いは?もあわせてご覧ください。
1つの規則に「並行」「平行」「併行」の3つ:漁船検査規則
ここまでの分かれ方には、例外もあります。
昭和25年の漁船検査規則(昭和25年農林省令第124号)は、全文で「並行」2回、「平行」4回、「併行」1回と、3つの字をすべて使っていました。
圧縮機は、その軸方向が船体中心線に並行に据え付けられていることを標準とする。
出典:漁船検査規則(昭和25年農林省令第124号)第23条第1項第10号/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
「船体中心線に並行に」。軸の向きの話なので、ふつうなら「平行」と書くところを「並行」と書いています。
同じ規則の第40条は、六分儀(天体の高さを測る道具)の鏡について「その平行度及び平面度が…」と「平行」を使い、すぐ後の号では次のように書いています。
…望遠鏡の視軸線が六分儀の枠面に併行となるよう調整することができ、且つ、垂直に上下動を行うことができること。
出典:漁船検査規則(昭和25年農林省令第124号)第40条第1項第6号の一部/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
「視軸線が枠面に併行」。線と面が交わらない向きの話を、1つの規則の中で「並行」「平行」「併行」の3通りに書いていることになります。
法令でも、昔の規則ではこの3つの字がきっちり分かれていない例が残っています。
大正12年の軌道建設規程も、2本の線路の間隔を定める条文で「並行セル両軌道」と書いています。この規程で「車輛」と「車両」が入れ替わっている話は、「車両」と「車輌」の違いは?で扱っています。
1つの規則の中に違う字が出てくる話としては、「侵食」と「浸食」の違いは?もあわせてご覧ください。
「併行」は同時に行うこと:地籍調査
「並行」と同じ読みの「併行」は、法令に4件だけありました。そのうち3件は、土地の調査の決まりです。
地籍図根測量及び地籍細部測量は、一筆地調査と併行して行うことができる。
出典:地籍調査作業規程準則(昭和32年総理府令第71号)第42条第4項/e-Gov法令検索にて2026年9月15日確認
2つの調査を同時に行うことを「併行して」と書いています。意味は「並行して」と同じです。
常用漢字表の「並」の例には「並行」が挙がっているので、同時に進める意味で書くなら「並行」を選ぶのが一般的です。
もう1つの「へいこう」:「平衡」はつり合い
「へいこう」と読む言葉には、「平衡」もあります。法令には96件あり、「並行」(24件)より多く出てきます。
「平衡」は、重さや力がつり合っていることを言う言葉で、線の向きや同時進行の話ではありません。「平衡感覚」「平衡を保つ」のように使います。
迷ったときの使い分け
同時に進めるなら「並行」
2つの作業、2つの手続き、2つの計画を同じ時期に進めるときは「並行」です。
法令でも「並行して行われ」「並行して行うことができる」と書かれています。
線・面・向きなら「平行」
2本の線や2つの面が交わらないこと、ある線と同じ向きであることを言うときは「平行」です。
法令でも「中心線に平行に」「平行な直線」「平行線」「平行駐車」と書かれています。
道路や線路が並んで走るなら「並行」
道路や線路が別の道路や線路に沿って並んで走るときは「並行」が使われます。道路構造令の副道も「当該区間に並行して設けられる」車道でした。
場面ごとの例
- 並行 … 2つの仕事を並行して進める/並行して審査する/本線に並行する副道/線路と並行して走る道路
- 平行 … 平行線/中心線に平行に引く/底辺に平行な直線/平行駐車/議論が平行線をたどる
- 平衡 … 平衡感覚/平衡を保つ
迷ったら、「時間の話か、形の話か」を考えます。同時に進むという時間の話なら「並行」、交わらないという形の話なら「平行」です。
後ろに続く言葉で使い分けを確かめた話としては、「根本」と「根元」の違いは?もあわせてご覧ください。法令の「根本」は、半分近くが「根本基準」でした。
よくある質問
「並行」と「平行」は読み方が同じですか
はい、どちらも「へいこう」です。常用漢字表では、「並」も「平」も音は「ヘイ」です。
「2つの仕事をへいこうして進める」はどちらですか
同時に進めるという意味なので「並行」です。法令でも、同時に進める場面は「並行して行われ」「並行して行うことができる」と書かれています。
「議論が平行線」は「並行線」ではないのですか
「平行線」です。どこまでいっても交わらない2本の線にたとえた言い方なので、交わらない線を表す「平行」を使います。法令にも、小切手の線引きの「二条ノ平行線」があります。
「平行して」は間違いですか
線が交わらずに並んでいる状態を言うなら「平行して」も使われます(法令では「平行している一対の電車線」など)。ただ、2つのことを同時に進める意味なら「並行して」です。
「併行」とはどう違いますか
「併行」も、2つのことを同時に行う意味で使われます。法令では4件だけで、地籍調査の決まりの「一筆地調査と併行して行う」などがあります。常用漢字表の「並」の例に「並行」が挙がっているので、ふつうは「並行」と書けば十分です。
法令ではどちらが多く使われていますか
現行の法令では「平行」が104件(58の法令)、「並行」が24件(14の法令)です。「平行」は道路・船・航空などの技術的な決まり、「並行」は有価証券の開示や補助犬の訓練などの決まりに多く出てきます。
法令でも字が混ざることはありますか
あります。昭和25年の漁船検査規則は、軸や線の向きの話を「並行」「平行」「併行」の3通りで書いていました。大正12年の軌道建設規程も、2本の線路について「並行セル両軌道」と書いています。
まとめ
「並行」は並んで進むこと・同時に行うこと、「平行」はどこまでも交わらない線や面の関係です。
常用漢字表でも、「並」の例に「並行」が挙がっています。
法令では「平行」が104件、「並行」が24件。「平行に」「平行な」「平行線」は線や向きの話、「並行して」は同時に進める話が中心でした。
ただ、昭和25年の漁船検査規則のように、同じ向きの話を「並行」「平行」「併行」の3通りで書いている例もあります。
時間の話(同時に進む)なら「並行」、形の話(交わらない)なら「平行」と覚えておけば、迷わずに書き分けられます。

