新入社員やビジネス初心者にとって、仕事で飛び交う「常套句(じょうとうく)」は最初は難しく感じるかもしれません。常套句とは、特定の場面でいつも決まって使われるお馴染みの表現のことで、いわゆる決まり文句やお決まりのフレーズのことです。ビジネスシーンでは礼儀や円滑なコミュニケーションのために数多くの常套句が使われています。本記事では、常套句の意味や語源から、ビジネスでよく使われる具体例、使い方の注意点、言い換え表現、メリット・デメリット、さらに英語など他言語での類似表現まで、網羅的に解説します。ぜひ参考にして、社会人として自信を持ってコミュニケーションできるようになりましょう。
常套句の意味・語源・特徴
「常套句」とは、「ある場合にいつも決まって使う文句」のことで、決まり文句や型通りの表現を指します (常套句(じょうとうく)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 – goo国語辞書)。例えば会話の中で状況が決まれば自然に口にするフレーズ、ビジネス文書で定型化した挨拶文などが常套句に当たります。似た意味の言葉には「月並みな表現」「陳腐な表現」「お約束のセリフ」などがあります。
「常套句」の語源をひもとくと、漢字の**「常套」**に注目できます。「常套」とは「ありきたりで古くさいさま」を意味する言葉であり、「套」には「古くさい、ありふれた」という意味があります (「常套句」の意味とは?読み方は?英語や類語まで例文付きで解説 – スッキリ) (「常套句」の意味とは?読み方は?英語や類語まで例文付きで解説 – スッキリ)。すなわち「常套句」とは「常に用いるありふれたフレーズ」という語源に由来しており、英語ではplatitude(決まり文句)やcommonplace(ありふれた言い回し)、フランス語由来のcliché(クリシェ)と表現されます (「常套句」の意味とは?読み方は?英語や類語まで例文付きで解説 – スッキリ) (「常套句」の意味とは?読み方は?英語や類語まで例文付きで解説 – スッキリ)。本来は否定的に「陳腐な表現」という意味合いで使われることもありますが、ビジネスの場では礼儀正しいコミュニケーションに欠かせない定番フレーズとしてポジティブに活用される場合が多いです。
ビジネスにおける常套句の特徴として、使う場面が決まっていることが挙げられます。挨拶やお礼、謝罪や依頼など、それぞれの場面に応じた定番表現が存在し、それを使うことでスムーズかつ丁寧に用件を伝えることができます。また、多くの人が意味を共有している表現なので、相手に安心感を与えたり人間関係を円滑にする効果もあります (ビジネスで役立つ言葉づかい「常套句」 | TKP貸会議室ネット)。一方で、いつも同じ表現になるため、使い方を誤ると機械的・形式的に聞こえてしまうこともあります。以下では具体的な場面ごとに、どんな常套句が使われているか見ていきましょう。
ビジネスメールで使われる常套句
ビジネスメールでは決まった型や定番フレーズが多く使われます。特に社外向けのメールでは丁寧で形式的な表現が好まれるため、常套句を上手に使うことが重要です。ここではメールの書き出しから締めまで、場面別によく使われる常套句を紹介します。
- 挨拶・書き出しの常套句:ビジネスメールの冒頭は必ず挨拶文から始めます。代表的なのが「お世話になっております。」です。取引先や顧客など社外の相手には、初めてメールする場合でもほぼこの一文から書き出すのが慣例です。「いつもお世話になっております。〇〇社の△△です。」のように会社名・氏名を続けて自己紹介します。日頃から取引のある相手には「平素より大変お世話になっております。」とより丁寧にすることもできます。また、返信メールでは「ご連絡ありがとうございます。」や「お返事いただきありがとうございます。」のようなお礼の常套句から始めると丁寧です。社内メールの場合、社外ほど改まった挨拶は不要ですが、上司や他部署宛てなら「お疲れ様です。」と書き出すことも一般的です(※社外の人には「お疲れ様です」は使わないのがマナーです)。
- 本題前のクッション表現:要件に入る前に一文おくことで柔らかい印象を与える常套句があります。「突然のご連絡失礼いたします。」や「早速ですが、本題に入らせていただきます。」などは、初めて連絡する相手や唐突な用件を切り出す際に便利です。また、相手の状況を気遣う「ご多忙のところ恐れ入りますが、」といった前置きもよく使われます。これらのクッション言葉を添えることで、お願いや質問への協力を得やすくなる効果があります。
- 依頼・確認の常套句:メールで何か依頼する際は、直接命令調にならないよう丁寧な定型表現を用います。例えば「お手数ですが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。」や「恐れ入りますが、〇〇についてご教示いただけますと幸いです。」などが典型です。「~していただけますか?」よりも「~していただけますと幸いです」「幸甚です」「存じます」などの結びにするとより丁重な響きになります。また、目上に対して承諾を求める場合は「~でよろしいでしょうか。」といった表現を使います(※「よろしかったでしょうか」は誤りなので後述)。
- お礼・感謝の常套句:ビジネスメールでは感謝を伝える場面も多々あります。取引先に何か対応してもらった際は「この度はご対応いただき、誠にありがとうございます。」のように述べます。シンプルに「ありがとうございます。」でも構いませんが、「誠に」「深く」「心より」などを付けると気持ちがより伝わります。締めの挨拶でも「何卒よろしくお願い申し上げます。」の前に「改めまして御礼申し上げます。」などと感謝を入れることがあります。
- お詫び・謝罪の常套句:メールで謝罪を伝える場合は定型の丁寧表現が不可欠です。「この度はご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。」や「心よりお詫び申し上げます。」がその例です。メールではできるだけ丁寧な謝罪文を心掛け、「すみませんでした」より「申し訳ありませんでした」、「申し訳ございませんでした」を使います。また、結びに「今後このようなことがないよう十分留意いたします。」等、再発防止策を添えるのも一般的です。
- 結び・締めの常套句:メールの最後は決まり文句で締めます。もっとも一般的なのが「何卒よろしくお願いいたします。」です。やり取りの締めや依頼の最後など幅広く使えます。状況に応じて「引き続きよろしくお願いいたします。」「今後ともよろしくお願い申し上げます。」などと変化させることもあります。また、用件のみ簡潔に伝えたメールでは「取り急ぎご連絡まで。」や「まずは書中にてお礼申し上げます。(手紙の場合)」のように結ぶこともあります。ただし「取り急ぎ」の表現は略式なので、ビジネスメールでは使いすぎないよう注意しましょう。
以上のように、ビジネスメールにはシーン別に様々な常套句があります。特に挨拶→用件→結びの基本構成は崩さず、適切な定型表現を用いることで、読み手に与える印象が格段に良くなります。定番フレーズを覚えておくと、いざという時に迷わずメールを書き始められるでしょう。
会議で使われる常套句
会議の場でも、司会進行や発言の合間に多くの常套句が用いられます。会議は複数人で進める正式な場ですから、丁寧でわかりやすい進行のために定型表現が重宝されます。以下に会議中によく使われる表現を場面順に挙げます。
- 会議の開始時:会議の冒頭では司会や主催者から挨拶があります。「本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。」は定番の開会挨拶です。この一言で参加者への感謝と礼儀を示します。そして、「定刻となりましたので、ただ今より会議を始めさせていただきます。」と宣言し、議事に入るのが一般的です。ビジネスの会議では「〇〇についての打ち合わせを開始いたします」といった形式張った言い方をすることで、きちんと場を切り替える効果があります。
- 議題の進行:会議中、議題ごとに発言や議論を促す際にも決まり文句があります。例えば、議論を進める前に「まず初めに、本日のアジェンダ(議題)をご説明いたします。」と断ったり、意見を求める際に「忌憚のないご意見をいただければ幸いです。」と促したりします。また、途中で資料を参照するときには「お手元の資料〇ページをご覧ください。」といった言い回しをよく使います。発言者を指名する場合は「では、△△さん、〇〇の件についてご説明をお願いできますでしょうか。」のように丁寧にお願いすることが多いです。質疑応答では「何かご不明な点やご質問はございませんでしょうか。」と問いかけるのも定番です。
- 発言・討論時の常套句:発言者自身が使う定番表現もあります。意見を述べる前に「恐縮ですが発言の機会をいただけますでしょうか。」「一点よろしいでしょうか。」と断ってから話し始めるとスムーズです。自分の意見を述べ終わったら「以上、簡単ではございますがご説明申し上げました。」と締めたり、他の人の意見に同意するとき「おっしゃる通りだと思います。」や「まさにその通りですね。」と相槌を打つこともよくあります。逆に反対意見を述べる際も「差し支えなければ意見を述べさせていただきます。」「あえて異論を述べさせていただきますと…」のようにクッションを置くと角が立ちません。
- 会議の終了時:議論が一通り終わったら、終了の挨拶をします。「それでは、議題は以上となります。」と締めくくった上で、「本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。」と感謝を述べるのが一般的です。さらに「以上をもちまして本日の会議を終了いたします。」や「お忙しい中ご参加いただき、誠にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。」といった言葉で締めると丁寧です。会議が長引いた場合などには「長時間にわたりお付き合いいただき…」と労いの言葉を添えることもあります。
- 懇親会や宴席での常套句:会議後の懇親の場では少し砕けた決まり文句もあります。例えば宴席の締めに「宴もたけなわではございますが、この辺りでお開きとさせていただきます。」というフレーズがよく使われます。「宴もたけなわですが」は「盛り上がっている途中ですが」という意味で、宴会の終わりの挨拶の定番です。ビジネスの公式の場だけでなく、このような社交の場面でも決まり文句が存在することを覚えておきましょう。
このように会議では、冒頭から締めまで一連の流れの中で常套句が活躍します。特に司会進行役を任された際は、これら定番の挨拶や進行表現を知っていると安心です。最初は形式的に感じられるかもしれませんが、慣れてくると適切な場面で自然に口に出てくるようになります。
電話応対で使われる常套句
電話でのやりとりにも、独特の常套句が多く存在します。対面と違い声だけのコミュニケーションになる電話では、定型表現を用いることでスムーズかつ失礼のない対応をすることができます。新社会人はまず電話応対の基本フレーズをしっかりマスターしておきましょう。
- 電話の受け方(社外からの電話):会社にかかってきた外線電話を取る際は、「はい、◯◯会社でございます。」と会社名を名乗るのが基本です。続けて、相手が名乗ったら「お世話になっております。」と返しましょう。この「お世話になっております」は電話応対の常套句で、相手企業との日頃の関係に感謝を込めた挨拶です (社会人と接する最低限のマナー 電話編 – リクナビ就活準備ガイド) (社会人と接する最低限のマナー 電話編 – リクナビ就活準備ガイド)。実際の会話例としては、相手が「○○株式会社の△△と申します。いつもお世話になっております。」と言ったら、自分も「こちらこそ、お世話になっております。」と返すのが礼儀です (社会人と接する最低限のマナー 電話編 – リクナビ就活準備ガイド)。初めての相手でも取引先であれば同様に使います。一方、社内の人からの電話なら「お疲れ様です」を使うこともありますが、基本は社外と社内で使い分けます。
- 取り次ぎや保留時の常套句:相手から担当者への取次ぎを頼まれたら、「かしこまりました。〇〇にお繋ぎいたしますので、少々お待ちください。」と答えます。担当者が電話に出られる場合は「〇〇でございますね。少々お待ちくださいませ。」などと伝えて保留にします。担当者が不在の場合は「申し訳ございません。ただいま〇〇は席を外しております。」と詫びた上で、「戻りましたら折り返しご連絡するよう申し伝えます。」と約束します。この際「恐れ入りますが、ご連絡先をお伺いできますでしょうか?」と電話番号などを尋ねるのも定石です (社会人と接する最低限のマナー 電話編 – リクナビ就活準備ガイド)。相手が急ぎの場合は「至急連絡をいたします」と伝えると良いでしょう (社会人と接する最低限のマナー 電話編 – リクナビ就活準備ガイド)。
- 電話メモの受け取り・確認:相手の伝言内容を聞いたら、「私、△△が承りました。」と自分の名前を名乗って確かに受け取った旨を伝えます (社会人と接する最低限のマナー 電話編 – リクナビ就活準備ガイド)。「承りました」は「確かに受け取り理解しました」の丁寧な常套句です。また、電話番号や名前など重要事項は復唱して確認します。例えば「念のため復唱いたします。○○株式会社の△△様、電話番号は□□-□□…でいらっしゃいますね?」と確認すれば、聞き間違いを防ぐとともに丁寧な印象を与えられます (社会人と接する最低限のマナー 電話編 – リクナビ就活準備ガイド)。
- 電話の切り方・終わりの挨拶:用件が終わり電話を切る際にも定番フレーズがあります。相手が名乗った場合「△△様ですね。よろしくお願いいたします。」と改めて依頼や確認の礼を述べることがあります (社会人と接する最低限のマナー 電話編 – リクナビ就活準備ガイド)。最後は「失礼いたします。」と言ってから静かに受話器を置きます。「よろしくお願いいたします。失礼いたします。」という組み合わせは電話終了時の決まり文句です。相手がこちらにお礼を言った場合も「とんでもございません(※後述するように本来は『とんでもないことでございます』が正しいですが、電話では短く**『とんでもないです』**と返すことも多いです)。また何かございましたらよろしくお願いいたします。」などと答えて終話することもあります。
- 社内電話の常套句:なお、社内間の電話ではもう少しくだけた表現も使われます。たとえば同僚への電話を取り次ぐ際「〇〇さん、△△部の□□さんからお電話です。」のように言いますが、基本的な敬語の型は同じです。上司に電話を代わるときは「〇〇部長にお電話がありました」と端的に伝える場合もあります。また、自分から社外に電話する場合の書き出しは「いつもお世話になっております。○○社の△△でございます。」となり、名乗りと挨拶をセットにします。これはメール冒頭と同じ感覚です。
電話応対は最初は緊張しますが、定型の常套句を覚えておけば落ち着いて対応できます。特に「お世話になっております」「かしこまりました」「少々お待ちください」「承知しました(承りました)」などのフレーズは頻出なので、自然に言えるよう練習しておきましょう。丁寧な電話応対は新人の大事な評価ポイントでもありますので、常套句を駆使して好印象を残したいですね。
謝罪の場面で使われる常套句
仕事をしていればミスやトラブルで謝罪しなければならない場面も出てきます。そんなとき、きちんと誠意を伝えるには適切な謝罪の言葉遣い=常套句を知っておくことが大切です。謝罪の場面では普段以上に丁寧な日本語を使い、深い反省と遺憾の意を示します。
- 基本の謝罪フレーズ:ビジネス謝罪の定番は「申し訳ございませんでした。」です。これは「申し訳ない」の謙譲語+丁寧語で、もっともよく使われる謝罪表現と言えます。口頭でもメールでもまず最初に出てくるべき言葉です。「申し訳ありませんでした」と過去形にすることで既に起こった出来事への謝罪を表します。さらに重大なミスであれば「誠に申し訳ございません。」「深くお詫び申し上げます。」などと重ねて謝意を示します。「お詫び申し上げます」は謝罪の意志を丁寧に伝える表現で、何度出しても構いません。
- 謝罪に添える反省と改善:単に謝るだけでなく、ビジネスでは原因の説明や再発防止策も述べる必要があります。その際の常套句もあります。例えば「この度の不手際によりご迷惑をおかけしましたことを、重ねてお詫び申し上げます。」や「私の不徳の致すところであり、弁解の余地もございません。」といった表現で深い反省を示します。そして「二度とこのようなことがないよう、十分注意いたします。」や「今後は再発防止に努めて参ります。」と改善への決意を述べるのも常套句化しています。「何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。」と寛大な処置を乞う言い回しも場合によっては用いられます。
- 遺憾の意を表す表現:社外向けの正式な謝罪文や会見などでは「遺憾」を用いることがあります。「誠に遺憾に存じます」は「非常に残念で申し訳なく思います」という意味です。ただし、これだけでは謝罪にならないため、「このような事態を招きましたことは誠に遺憾に存じます。深くお詫び申し上げます。」のようにセットで使われます。「痛恨の極み」「慙愧に堪えない」など大げさな表現は通常のビジネスではあまり使いませんが、ニュアンスとして知っておくとよいでしょう。
- 口頭謝罪のポイント:直接会って謝る場合は言葉遣いだけでなく態度も重要です。「大変失礼いたしました。」「申し開きもございません。」など平身低頭な常套句を使いつつ、深く頭を下げます。また相手の怒りや不満に対しては「おっしゃる通りでございます。」「お怒りはもっともです。」などと受け止める言葉を入れると効果的です。反論や言い訳は厳禁で、「ですが」「しかし」は極力避けましょう。謝罪では相手に十分話させ、「恐れ入ります」が口ぐせになるくらい丁寧さを維持するのが大事です。
謝罪の場面では、普段以上に丁寧で心のこもった常套句を使うことが求められます。定番のフレーズ自体は決まりきったものですが、それをどれだけ真摯な気持ちで伝えられるかが重要です。形式に沿って謝罪文言を述べつつも、自分の言葉でしっかり反省と改善の意志を示せるようになりましょう。
依頼の場面で使われる常套句
仕事で誰かに何かをお願いしたり、許可を得たりする際にも常套句が大活躍します。日本語は直接的な表現を避け、遠回しにお願いすることで相手への配慮を示す文化があります。そのためビジネスの依頼文ではクッション言葉や丁寧な依頼フレーズが豊富に用いられます。
- 依頼のクッション言葉:いきなり「~してください」と言うのではなく、その前に一言添えるのが基本です。「恐れ入りますが、」「恐縮ですが、」「お手数ですが、」「ご多忙のところ恐縮ですが、」といった枕詞は依頼や質問の常套句です。これらを付けるだけでグッと柔らかく丁寧な印象になります。例えば「恐れ入りますが、こちらの書類をご確認いただけますでしょうか。」のように使います。
- 依頼表現の定番フレーズ:本題のお願い部分では「~してください」ではなく可能表現や婉曲表現を使います。よく使われるのは「~していただけますでしょうか。」という形です。「ご対応いただけますでしょうか」「お送りいただけますでしょうか」など何にでも応用できます。さらに丁寧に「いただけますと幸いです」「幸甚に存じます」と結ぶこともできます(例:「ご協力いただけますと幸甚です」)。また「~してくださいますようお願いいたします。」という表現も一般的です。「ご査収くださいますようお願いいたします」(ご確認くださいの丁寧版)のように用います。
- 許可を得る場面:自分が何かさせてもらう許可を得たい場合も常套句があります。たとえば「席を外してもよろしいでしょうか」「本日休暇をいただければと存じます」といった言い方です。「よろしいでしょうか」は相手に許可を求める定番フレーズで、口頭でもメールでも使えます。また「~させていただければ幸いです」や「存じます」もへりくだったお願い表現です。会議中に質問するときの「少しお時間をいただけますでしょうか。」も許可を求める一例ですね。
- 断りや猶予をお願いする場合:相手の依頼に対し即答できないときやお断りするときにも緩衝的な言い回しが使われます。例えば、難しい依頼を断る場合に「誠に恐縮ですが、今回は見送らせていただけますと幸いです。」などと言います。「できません」を直接言わず「見送る(実行しない)」という婉曲表現を使うのがポイントです。また、回答や納期に猶予が欲しいときは「恐縮ですが、もう少しお時間を頂戴できればと存じます。」などとお願いできます。否定や延期のお願いほど、より丁寧な常套句でオブラートに包むことが大切です。
依頼の場面では、相手への配慮を示す丁寧な言い回しが鍵となります。常套句を駆使すれば角が立たずにお願いや交渉ができますが、丁寧すぎて回りくどい印象を与えないようバランスも重要です。自社の文化や相手との関係性にもよりますが、新人のうちは慎重なくらいがちょうど良いでしょう。慣れてきたら状況に応じて簡潔さとの加減も覚えていくとよいですね。
常套句の間違いやすい使い方・注意点
常套句は便利な反面、使い方を誤ると相手に失礼になったり不自然に聞こえたりすることがあります。ビジネス敬語には独特のルールがあり、新人が陥りがちな間違いも少なくありません。ここでは特に注意すべき誤用例や使い方のポイントを整理します。
- 誤った敬語や上下関係のミス:まずは敬語そのものの間違いです。よくあるのが目上の人に「了解しました」と言ってしまうこと。実は「了解」は目上から目下に対して使う表現であり、上司や取引先には不適切です。「承知しました」あるいは「かしこまりました」と言い換えるのが正解です (おさえておきたいビジネス敬語の間違いがちな用例24選 | 株式会社LIG(リグ)|DX支援・システム開発・Web制作)。同様に、上司に「ご苦労様です」というのもNG。「ご苦労様」は目上が目下に掛ける労いの言葉なので、部下から上司へは失礼に当たります。上司には「お疲れ様です」を使いましょう (おさえておきたいビジネス敬語の間違いがちな用例24選 | 株式会社LIG(リグ)|DX支援・システム開発・Web制作)。この違いは混同しやすいので要注意です。
- 二重敬語・過剰敬語:丁寧にしようとするあまり誤用してしまうケースもあります。例えば「お越しになられる」は「お越しになる」に尊敬の助動詞「られる」を重ねた二重敬語で、本来は誤りです (おさえておきたいビジネス敬語の間違いがちな用例24選 | 株式会社LIG(リグ)|DX支援・システム開発・Web制作)。正しくは「お越しになります」または「お越しになりました」です。同様に「おっしゃられました」も誤りで「おっしゃいました」が正解です (おさえておきたいビジネス敬語の間違いがちな用例24選 | 株式会社LIG(リグ)|DX支援・システム開発・Web制作)。敬語表現は一見複雑ですが、二重にしないシンプルな形が原則と覚えておきましょう。また「〇〇させていただいております」を多用しすぎるのもくどくなりがちです(例:「私、営業部の田中と申させていただいております」より「申します」で十分)。
- 誤った丁寧語の例:新人がよくやりがちなのが、変に過去形にする表現です。顧客対応で「~でよろしかったでしょうか?」と確認する場面がありますが、正しくは「よろしいでしょうか」です (おさえておきたいビジネス敬語の間違いがちな用例24選 | 株式会社LIG(リグ)|DX支援・システム開発・Web制作)。過去形にすると丁寧に聞こえそうですが日本語として不自然になるので注意しましょう。また、来客対応で「どちら様でしたでしょうか?」と言ってしまう人がいますが、これも過去形を重ねており、「どちら様でしょうか?」で十分です。
- 不適切な略語・くだけすぎ:ビジネスでは砕けた言い方は避けるのが無難です。例えば謝罪で「すみません」だけ言うのは軽く聞こえます (おさえておきたいビジネス敬語の間違いがちな用例24選 | 株式会社LIG(リグ)|DX支援・システム開発・Web制作)。「申し訳ありません(申し訳ございません)」と言いましょう。またメールで「○○課長各位様」などと書く間違いもあります。「各位」と「様」を重複するのは誤用なので「各位」のみか「各位様ではなく担当各位」とします。「了解」「了承」といった言葉を乱用するのもぶっきらぼうな印象になります。
- 常套句の使いすぎによる弊害:常套句は便利ですが、乱用すると機械的な印象を与えかねません。例えば会話の相槌ですぐに「なるほど」を連発したり、「申し訳ございませんでした」を繰り返しすぎたりすると、かえって心がこもっていないように感じさせてしまいます。また、文面でテンプレートをコピペしたような文章だと、読み手に「どのメールでも同じ文句だな」と思われてしまうことも。定型表現ばかりにならないよう、状況に応じて多少言い回しを変える工夫も必要です。
- 状況に合った言葉選び:常套句は万能ではなく、状況に合うかどうかを考えることも大切です。例えば相手に明らかな非がある場合にまで過度にへりくだった謝罪をすると違和感がありますし、逆にこちらのお願いが強いのに軽い言葉で済ませると誠意が伝わりません。ビジネス文章でも、カジュアルな関係の取引先に格式ばった季節の挨拶文から始めるのはかえって仰々しいこともあります。相手との関係性や場の空気を読んで、どの程度フォーマルな常套句にするか判断しましょう。
以上のようなポイントに気を付ければ、常套句を正しく効果的に使えるようになります。要は「意味」「敬意の方向」「文法」を正しく理解し、自分の言葉として使いこなすことです。わからないまま使っていると誤用に気づけないので、一つひとつ意味や正用法を確認する習慣をつけましょう。多少の間違いはあっても新人なら大目に見てもらえますが、早めに直して信頼感のある言葉遣いを身につけたいですね。
常套句の言い換え表現・バリエーション
常套句は定番の表現ですが、毎回同じ言い回しではマンネリに感じることもあります。シチュエーションによって微妙に言葉を変えたり、類似の表現でバリエーションを持たせたりすることで、コミュニケーションに柔軟さと深みが出ます。ここでは主要な常套句の言い換えやバリエーションの例を挙げてみます。
- 挨拶・感謝の言い換え:ビジネスメール冒頭の「お世話になっております」はほぼ決まりですが、たまに「平素より格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。」のようなより丁寧な表現にすることもあります。また、「いつも大変お世話になっております」と「大変」を入れて感謝の度合いを強めることも可能です。お礼の言葉も「ありがとうございます」以外に「心より感謝申し上げます」「厚く御礼申し上げます」などに変えるとフォーマルさが増します。取引先への結びでは「今後ともご愛顧のほどお願い申し上げます」といった表現も使われます。
- クッション言葉のバリエーション:依頼や質問の前置きとして、「恐れ入りますが」「恐縮ですが」以外にも様々なクッション言葉があります。「差し支えなければ」「ご多用中恐縮ですが」「あいにくではございますが」などシーンに応じて使い分けられます。例えば何かを断る前には「大変恐縮ではございますが…」と前置きすると角が立ちにくくなります。電話で聞き返すときの「恐れ入ります」が続いたら、2回目は「申し訳ございませんが、もう一度よろしいでしょうか」に変えるなど、バリエーションを持たせると良いでしょう。
- 「よろしくお願いします」の別表現:締めの挨拶で便利な「よろしくお願いいたします」ですが、これも繰り返しになると陳腐に感じる場合があります。別の言い方として「何卒よろしくお願い申し上げます」はより丁重ですし、社内で継続的な協力を求めるなら「引き続きご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます」といった表現もあります。また、あえて簡潔に「よろしくお願いいたします。以上、取り急ぎご報告まで。」のように他の文言を加えて変化をつける手もあります。
- 断り・否定表現のオブラート:前述のように「難しいです」の代わりに「見送らせていただきます」があるように、否定のバリエーションも豊富です。「できません」を「いたしかねます」とするのも一例です(例:「大変恐縮ですが、その件につきましては対応いたしかねます。」)。直接的すぎると感じる言葉は可能な限り婉曲表現に言い換えることがビジネスでは好まれます。「伝え聞いた話ですが」は「伺っておりますが」に、「知っていますか?」は「ご存じでしょうか?」に、といった具合です。敬語のルールも絡みますが、言い換えパターンを覚えておくと表現の幅が広がります。
- 決まり文句自体を変える:例えば、会議終わりの「ありがとうございました」の代わりに「お疲れ様でした」を使うかどうか、メール冒頭を「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。」(新年時)と季節の挨拶にするかなど、定番の中にも選択肢があります。乾杯の挨拶で「ご発展とご健勝を祈念いたしまして、乾杯!」などと凝った言い方にすることもできますし、スピーチ冒頭の「僭越ながら一言ご挨拶申し上げます」なども典型的な挨拶文句と言えます。TPOに合わせてそうしたフレーズを持ち出せると、「この人は言葉をよく知っているな」という印象を与えられるでしょう。
- 英語表現への言い換え:外国人が相手の場合、無理に日本語の常套句を使っても伝わりません。その際は内容を直接的な英語に言い換える必要があります(英語での定番表現については次項で述べます)。例えば「お疲れ様です」は英語にはないので「Hello, team」とカジュアルに言う、謝罪も日本語ほどクドくせず「I’m very sorry about this. We will fix it immediately.」程度にするといった具合です。他言語では同じ常套句が存在しない場合も多いため、直訳はせず、適切な言葉を選ぶようにしましょう。
このように常套句にも多彩なバリエーションがあります。同じ表現ばかりではなく、状況に応じて微妙に言い回しを調整することで、より相手に響くコミュニケーションが可能になります。ただし凝った表現を無理に使おうとして間違えると本末転倒なので、自信のないうちは基本の常套句を正しく使うことを優先しましょう。徐々にレパートリーを増やしていけば、ワンランク上の言葉遣いが身についていくはずです。
常套句を使うことのメリット・デメリット
決まり文句である常套句を使うことには、コミュニケーション上の利点が多くありますが、一方で注意すべき欠点も存在します。ここではビジネスで常套句を活用するメリットとデメリットを整理してみます。
<メリット>
- 礼儀正しさを簡潔に示せる:常套句は形式が整っており、使うだけで一定の礼儀や敬意を表現できます。新人でも定番フレーズを覚えておけば、ビジネスマナーに則った丁寧な対応が可能になります。例えば「お世話になっております」「よろしくお願いいたします」といった一言で、ビジネスらしい礼儀正しさが伝わります。
- 円滑なコミュニケーションの潤滑油になる:あいさつや相槌の常套句は、コミュニケーションの潤滑油です。会話の中で「なるほど」「さようでございますか」などと相槌を打てばスムーズに進みますし、「お疲れ様です」と声を掛け合うことで職場の一体感も生まれます。また、TKPの記事にもあるように繋ぎ言葉や相槌の常套句を知っておけば会話中の沈黙を防ぐ効果もあります (ビジネスで役立つ言葉づかい「常套句」 | TKP貸会議室ネット)。新入社員でも定番のリアクションができれば先輩・上司とのコミュニケーションが円滑になるでしょう。
- 誤解や失言のリスクを減らせる:あまり聞き慣れない言い回しを自分で考えて使うと、意味が伝わらなかったり誤解を招いたりする恐れがあります。その点、常套句は誰もが意味を共有している安全な表現です。定型句を使うことで相手に意図が正確に伝わりやすく、トラブルになりにくいというメリットがあります。特に謝罪や依頼などデリケートな場面では、冒険せず常套句を使うのが無難です。
- ビジネスシーンにふさわしい印象を与える:普段の話し言葉や若者言葉しか知らないと、どうしてもビジネスの場にはそぐわない話し方になってしまいます。常套句を適切に使えるということは、社会人らしい言葉遣いができるという証でもあります。例えば電話応対で「〇〇は只今不在でして…」ではなく「〇〇は只今席を外しております」と言えると、「ちゃんと教育されている新人だな」という好印象を持ってもらえるでしょう。信頼感やプロ意識を演出できるのもメリットです。
- 心理的な安心感・フォーマットがある安心:話す側にとっても、使い慣れた定型表現があることは安心材料になります。特に緊張する場面(電話、プレゼン、クレーム対応など)では、頭の中で決まったフレーズを引き出して話す方が落ち着いて対応できます。ある意味**コミュニケーションの「型」**があることで、誰でも一定水準の応対がしやすくなるのです。新入社員がマニュアルに沿って話せるのは常套句のおかげとも言えます。
<デメリット>
- 紋切り型で心がこもっていないと感じさせる:あまりにも決まった言葉ばかり使っていると、相手によっては「マニュアル通りで機械的だな」と感じることがあります。例えばクレーム対応で何を言われても「申し訳ございません」を連呼していると、「本当に悪いと思っているのか?」と不信感を与えかねません。常套句は便利ですが、使う際の声の調子や表情、場の空気に配慮しないと逆効果になる恐れがあります (第107回「表現する」ということ | コミュニケーション力を鍛える ~アナウンサーのノウハウから~ | ユーザ協会)。気持ちが伝わるよう、言い方にも気を配りましょう。
- 画一的で印象に残らない:ビジネス文書やプレゼンなどでは、常套句に頼りすぎると他社と同じような内容になってしまい、差別化できないという面もあります。例えば提案書で「貴社益々ご清栄のこととお喜び申し上げます」などの定型挨拶ばかりでは、肝心の提案内容よりも前置きが長くなり埋没してしまいます。創造性が求められる場面では、常套句をあえて避けてオリジナリティのある表現に挑戦することも大切です。使いすぎると陳腐な印象を与えてしまうリスクがあります。
- 誤用のまま覚えてしまう恐れ:常套句に頼るあまり、一語一句変えずに丸暗記して使っていると、自分で考える力が養われません。中には誤用のまま広まっている表現もあるため(例えば「とんでもございません」を本来は誤用だと知らず使っている等)、自分の言葉で言い換える練習をしないと、いざ決まったフレーズから外れた状況に対応できなくなります。他人の言葉を借りているだけでは、微妙なニュアンス調整ができないというデメリットがあります。
- 時代や相手によっては堅苦しすぎる:常套句の中には古めかしい表現もあります。若い同僚同士のやりとりであまりに堅苦しい言葉を使うと、逆に距離感を感じさせることも。昨今はビジネスメールでも若干カジュアル化が進んでおり、あまりにフォーマルすぎる文章は「大げさ」「古臭い」と受け取られるケースもあります。相手や場面によっては常套句を崩す柔軟さも必要で、使わないことが必ずしも悪ではない点には注意です。
- 他人依存・思考停止になる危険:常套句ばかり使っていると、自分の頭で考えず反射的に喋ってしまうことがあります。これはメリットでもあるのですが、行き過ぎると相手の話の本質を捉えずにステレオタイプな返事をしてしまう恐れがあります。文章を書く上でも「前例踏襲」で同じ挨拶文を使い回しているだけでは、自分の言葉で語る力がつきません。表現を工夫することなく他人が作った型に乗っかるだけでは、コミュニケーションスキルの向上も頭打ちになってしまうでしょう。
以上のように、常套句は諸刃の剣とも言えます。基本的には社会人生活を円滑にする強い味方ですが、それに頼りきりにならず適切に使いこなす姿勢が大切です。メリットを活かしつつデメリットを補うには、常套句に少し自分なりの言葉を補ったり、使う場面を選んだりする工夫が必要でしょう。要はバランスであり、TPOに合わせて「型」と「オリジナリティ」を使い分けることがビジネスコミュニケーション上手への道です。
英語など他言語における類似の表現
最後に、日本語の常套句に対応する他言語での表現について触れておきます。特に英語のビジネスシーンでは、日本語のような敬語表現や決まり文句は少ないものの、定型的なフレーズがやはり存在します。外国語でコミュニケーションを取る際、日本語の常套句を直訳しても伝わらない場合が多いので、適切な類似表現を知っておくと役立ちます。
- 挨拶・書簡の定型:英語のビジネスメールでは、冒頭は日本語のように会社名と挨拶ではなく、宛名や希望の一言から始めます。典型的なのは「Dear Mr. Smith,」のような書き出しです(日本語の「〇〇様」に相当)。知らない相手には「To Whom It May Concern:」(関係者各位)なども使われます。挨拶文としては「I hope this email finds you well.(お元気でお過ごしでしょうか)」が定番で、日本語の「お世話になっております」に近いニュアンスでよく使われます。また電話口での名乗りでは「Hello, this is [Name] from ABC Company.(もしもし、ABC社の[名前]です)」というのが基本フレーズです。日本語ほど畏まった表現ではありませんが、英語にもビジネス文書や電話対応の型があります。
- 依頼・質問の定型:英語で何かを依頼するときも、礼儀正しく聞くための表現があります。直接「Do this.」とは言わず、「Could you please ~ ?(~していただけますか)」や「I would appreciate it if you could ~.(~していただけると幸いです)」などが一般的です。日本語のクッション言葉に近い役割として「Excuse me, but ~」や「I’m sorry to bother you, but ~」のような前置きフレーズもあります。例えば「お手数ですが確認お願いします」は「Sorry to bother you, but could you please check this?」といった形で表現できます。また、許可を求めるときは「May I ~ ?(~してもよろしいですか)」が定番です。
- お礼・謝罪の定型:英語でも感謝と謝罪の定番表現は押さえておきたいところです。感謝は「Thank you for ~.(~をありがとう)」が基本で、ビジネスでは「your cooperation(ご協力)」「your prompt reply(早速の返信)」などを続けて具体的に謝意を伝えます。より丁寧にするなら「I really appreciate your help.(ご助力に心より感謝申し上げます)」のような表現もあります。謝罪については「I’m sorry」や「We apologize for ~.(~についてお詫びいたします)」が決まり文句です。「ご迷惑をおかけしました」は「for the inconvenience」に対応し、「We apologize for any inconvenience caused.(ご不便をおかけしましたことをお詫びします)」などと使われます。日本語ほど繰り返しませんが、必要な場面でははっきりと謝意を示すのが英語圏のマナーです。
- ビジネス会話の決まり文句(英語):英語にも会議や商談でのちょっとした決まり文句があります。会議開始時には「Let’s get started, shall we?(始めましょうか)」や「Thank you all for coming.(お集まりいただきありがとうございます)」と言うことが多いです。意見を述べるときは「In my opinion, ~(私の意見では~)」、賛成するには「I agree with you.(賛成です)」、反対なら婉曲に「I’m not sure I agree.(賛同しかねます)」などがあります。議論を締める際には「To sum up, ~(要約すると~)」や「I think we’ve covered everything.(議題は全て網羅できたと思います)」、終了時には「Thank you for your time.(お時間をいただきありがとうございました)」がよく使われます。これらは日本語ほど形式ばっていませんが、繰り返し使われる決まった言い回しとして知っておくと便利です。
- 他の言語の例:英語以外でもビジネス慣習のある言語には常套句があります。例えば中国語なら、ビジネスメール冒頭に「尊敬的 ~ 您好」(拝啓〇〇様こんにちは)と書き出したり、結びに「此致 敬礼」(敬具に相当)と添える習慣があります。フランス語でも手紙で「Veuillez agréer, Monsieur, l’expression de mes sentiments distingués.」(直訳: 私の敬意を受け入れてください)というような決まり文句の結語があります。それぞれ文化に根ざしたフォーマル表現が決まっているので、他言語でビジネスをする際は日本語の感覚をそのまま当てはめずに、その言語ならではの定型表現を学ぶことが大切です。
まとめると、日本語の常套句は他言語にそのまま置き換えられるものばかりではありません。しかし「定番のフォーマルフレーズを使うことで丁寧さや礼儀を示す」という考え方自体は共通しています。英語のcliché(クリシェ)という言葉は、しばしば常套句やありきたりな表現として否定的に使われますが、ビジネス実務の中では決まった表現を使うことはむしろコミュニケーション円滑化の要です。日本語・英語問わず、適切な場面で適切な決まり文句を使いこなせるようになりたいものですね。
参考文献・出典
- goo国語辞書『常套句』項目(デジタル大辞泉)【43】
- TKP貸会議室ネット:ビジネスで役立つ言葉づかい「常套句」【1】【4】
- スッキリ(gimon-sukkiri.jp):「常套句」の意味や語源、類義語・英語訳の解説【7】【9】【11】
- リクナビ就活準備ガイド:社会人と接する最低限のマナー「電話編」【21】【20】
- シャチョサン:『完全版 ビジネスメール用語集』よく使う言葉と言い換えフレーズ【27】
- 株式会社LIG:おさえておきたいビジネス敬語の間違いがちな用例24選【38】【39】【40】【42】
- NativeCamp Q&A:「常套句」を英語で言うと?(cliché, stock phrase などの解説)【12】