エアコンの温度は「調整」でしょうか、「調節」でしょうか。
日程は「調整」で合っている気がしますが、その違いを説明しようとすると手が止まります。
結論を先にお伝えすると、境目は「関係」か「程度」かです。
- 調整 … 複数のもののつり合いを取って、ほどよい状態にする
- 調節 … 一つのものの程度・分量を、ほどよい状態にする
そしてもう一つ、同じ「チョウセイ」と読む「調製」という言葉もあります。
理系や食品の分野ではこちらが正解になる場面があり、混同されがちです。
「調整」と「調節」の違いは?結論から
どちらも「ほどよい状態にする」という点は同じです。
違うのは何を相手にしているかです。
調整は「複数の関係」を整える
調整は、いくつかの要素がぶつかっているとき、そのつり合いを取ることです。
- 日程を調整する … 複数の人の予定を突き合わせる
- 意見を調整する … 対立する主張の落としどころを探す
- 利害を調整する … 立場の違う相手同士を折り合わせる
- ピントを調整する … レンズと被写体の距離を合わせる
いずれも「合わせる相手がいる」点が共通しています。
調節は「一つの程度」を上下させる
調節は、ある一つの対象について、その量や強さを適切な範囲に収めることです。
- 温度を調節する … 高いか低いかを動かす
- 音量を調節する … 大きいか小さいかを動かす
- 明るさを調節する … 明るいか暗いかを動かす
- 水量を調節する … 多いか少ないかを動かす
こちらは目盛りを動かすイメージです。合わせる相手はいません。
漢字が示す違い
2つの言葉の性格は、後ろの漢字に出ています。
「整」はきちんと並べること
「整」にはととのえる・きちんとそろえるという意味があります。
整列、整理、整備、調整。いずれもばらばらのものを、あるべき形に並べ直す働きです。
相手が複数あるからこそ「そろえる」必要が生まれます。
「節」はほどよく区切ること
「節」はもともと竹のふしを表す漢字です。
そこから区切り・ほどよいところで止めるという意味が生まれました。
節約、節制、節度、調節。どれも行きすぎないところで抑えるという感覚でつながっています。
- 調整 … 複数をそろえる
- 調節 … 程度をほどよいところで抑える
どちらを使うか迷う言葉の一覧
実際に書くときに迷いやすいものを並べます。
「調節」を使うもの
- 温度・室温・湿度
- 音量・ボリューム
- 明るさ・照度
- 水量・流量・風量
- 椅子の高さ・ベルトの長さ
- 火加減
- 体温(体温調節機能)
「調整」を使うもの
- 日程・スケジュール
- 意見・利害・関係
- 価格・料金
- ピント・焦点
- 体調(コンディション調整)
- 年末調整
- バランス・配分
並べてみると境目が見えます。
数値のつまみが1つだけなら「調節」、突き合わせる相手がいるなら「調整」です。
同じ対象でも視点で変わる
やっかいなのは、同じものについて、どちらも使える場合があることです。
「音量」を例にしてみます。
- 音量を調節する … 大きすぎるので小さくする(量の上下)
- 音量を調整する … BGMとナレーションのバランスを取る(関係の調停)
同じ「音量」でも、単独で上下させるのか、他と合わせるのかで変わります。
「体」も同じです。
- 体温を調節する … 体そのものの温度を上下させる
- 体調を調整する … 睡眠・食事・練習量のつり合いを取る
言葉ではなく、そのとき何をしているかで決まります。
もう一つの「チョウセイ」— 調製
ここは、多くの解説が触れていない部分です。
「チョウセイ」と読む語には「調製」もあります。
理科の実験、薬学、食品表示などで使われる言葉です。
県立広島大学の化学実験の教材には、こう説明されています。
調整と調製、どちらもチョウセイと読みますが、同音異義語です。“調整”はぐあいの悪い部分を直したり過不足をなくしたりしてほどよい状態にすることを意味し、“調製”は注文や規格に応じて作ることを意味します。
出典:県立広島大学 生物資源科学部「【生命環境学科】1年生 化学実験レポート-4」/2026年8月23日確認
つまり「調製」は“作る”という意味です。整えるのでも、加減するのでもありません。
- 溶液を調製する … 決められた濃度のものを作る
- 試料を調製する … 分析用に準備して作る
- 調製豆乳 … 油脂や砂糖類を加えて作った豆乳(JASの区分名)
身近な例は豆乳のパッケージです。
「調製豆乳」は油脂や砂糖類を加えて飲みやすく作ったもので、日本農林規格に定められた区分名です。
「調整豆乳」と書くのは誤りなので、店頭で見かけたら表記を確かめてみてください。
3つの見分け方
- 調整 … 複数を突き合わせてそろえる
- 調節 … 一つの程度を上下させる
- 調製 … 規格に応じて作る
迷ったときの見分け方
「つまみ」があるか
目盛りやつまみを動かすイメージなら調節です。
温度、音量、明るさ、水量。すべて「もっと上/もっと下」で表せます。
相手がいるか
合わせる相手・突き合わせる対象があるなら調整です。
人、予定、意見、他の音。1つでは成り立たないのが調整です。
新しく作っているか
もとから在るものを直すのではなく、これから作るなら調製です。
よくある質問
エアコンの温度は調整と調節のどちらですか
調節です。
温度という一つの値を上下させているからです。
ただし「各部屋の温度を調整する」のように部屋どうしのバランスを取る場合は調整になります。
「年末調整」はなぜ調整ですか
毎月天引きした所得税の合計と、1年分の正しい税額とを突き合わせて過不足を精算するからです。
2つの数字を合わせる作業なので「調整」です。
「調節」と「調律」は違いますか
違います。
「調律」は楽器の音の高さを基準に合わせることで、対象が限定されています。
音量の上下は「調節」、複数の楽器のバランスは「調整」です。
「無調整豆乳」と「無調製豆乳」はどちらが正しいですか
どちらも規格上の区分名ではありません。
「豆乳類の日本農林規格」(JAS)が定めている区分は、次の3つだけです。
- 豆乳 … 大豆から得た乳状の飲料で、大豆固形分が8%以上のもの
- 調製豆乳 … 植物油脂・砂糖類・食塩等の調味料を加えたもので、大豆固形分が6%以上のもの
- 豆乳飲料 … さらに粉末大豆たん白や果汁等を加えたもの
出典:農林水産省「豆乳類の日本農林規格」第2条/2026年8月23日確認
つまり加えものをしていないものは、規格上は単に「豆乳」です。
「無調整豆乳」は商品名として広く使われている表現で、規格の区分名ではありません。
一方の「調製豆乳」は規格に定められた正式な区分名なので、「調整豆乳」と書くのは誤りです。
ビジネス文書ではどちらが無難ですか
相手や予定が関わる場面がほとんどなので、「調整」を使う場面が多くなります。
「日程を調整させていただきます」「関係部署と調整のうえ」などが典型です。
まとめ
「調整」は複数のつり合いを取ること、「調節」は一つの程度を上下させることです。
後ろの漢字がそのまま性格を表しています。
「整」はきちんと並べること、「節」はほどよいところで抑えること。
迷ったときは「つまみがあるか」「合わせる相手がいるか」で判断してください。
温度・音量・明るさのように目盛りで表せるものは調節、
日程・意見・利害のように相手がいるものは調整です。
同じ対象でも視点で変わります。
音量を単独で上下させるなら調節、他の音とのバランスを取るなら調整です。
そして3つ目の「調製」を忘れないでください。
こちらは規格に応じて作るという意味で、溶液の調製や調製豆乳がその例です。
同じ音で書き分けが必要な言葉については「科学」と「化学」の違いは?を、
同じ言葉に複数の表記がある例については「一人ひとり」「一人一人」「ひとりひとり」はどれが正しい?を、
分野によって使い分けられる言葉については「リポート」と「レポート」はどっちが正しい?もあわせてご覧ください。
※本記事の「調製」に関する記述は県立広島大学 生物資源科学部の化学実験レポートを、豆乳の区分に関する記述は農林水産省「豆乳類の日本農林規格」を、いずれも2026年8月23日に確認したものです。
同じ読みで漢字が分かれる言葉としては、「見栄え」と「見映え」はどっちが正しい?文化庁の使い分け例で確かめたもあわせてご覧ください。

